東腎協第32回総会記念講演
腎疾患を巡る話題
-腎不全における動脈硬化予防法の模索-
講師:国立国際医療センター腎臓内科医長(人工透析室長) 斉間恵樹先生

 軽部 外にいる方中にお入りになって着席をお願いいたします。午前中の総会、少し時間延びましたが、熱心なご討議、ありがとうございました。

斉間 恵樹 先生

 ただ今より「腎疾患医療を巡る話題」と題しまして、国立国際医療センター腎臓内科医長の斉間恵樹先生のお話をいただきます。斉間先生のプロフィールをご紹介しますと、昭和54年に帝京大学医学部を卒業され、国立病院医療センターの臨床研修医となられ、現在は同センター、国立国際医療センターで、腎臓内科医長、人工透析室長として診療、研究されておられます。
 また日本腎臓学会の学術評議員、日本老年医学会代議員など、その他多くの学会にも所属されていらっしゃいます。先生は国際協力事業団・JICA(ジャイカ)の一員として途上国の医療にも熱心に取り組んでいらっしゃいます。それでは早速先生に腎疾患医療を巡る話題ということで、お話を伺いたいと思います。斉間先生、よろしくお願いいたします。

葉酸は葉っぱに多く入っている

 斉間 軽部さん、ご紹介ありがとうございました。本日はこのような機会を与えていただきありがとうございます
何かお話をということだったので、私が最近かかわっていることについて幾つかこちらでご提案したところ、皆様方の少しお役に立てるような話が望ましいということだったので、今スライドが出ていますように、動脈硬化予防法の模索ということで、この副題にありますように、葉酸というものと動脈硬化の関係についてのお話をしたいと思います。

 葉酸というのは時々テレビのコマーシャルなどで、葉酸という字が出てきますが、左が「大塚製薬」から出ている製品です。右が「アサヒ」から出ている製品です(スライド1)

スライド1

 解説によると、葉酸はビタミンB群の仲間です。女性の健康維持のために通常の食事にプラスしてサプリメントで葉酸を1日400マイクログラム摂取することが推奨されています。本品はさらに健康維持に欠かせないビタミンB6とビタミンB12を配合しました、というような書き方がしてあるわけです。

 これでは女性のためだけに必要なものなのかという印象があると思うのですけれども、これが割合透析患者皆さんと深くかかわっていることを、今日は知っていただければと思います。

 まず葉酸は名前のとおり要するに葉っぱですね。葉っぱに多く入っているビタミンB群の一種だということです。特に緑黄野菜の中にいろんな形で含まれていて、体のいろいろな代謝反応に関係しているものです。
 読みますと、葉酸は生体において不可欠な栄養素である。代謝において重要な役割を果たす。と書いてあります。これは、最近話題のアミノ酸ですね、アミノ酸を分解してアミノ酸の中の一種であるメチオニンというものをつくったり、ある種のものを分解していったりするということです。

 葉酸が足りなくなると、こういう反応がストップしてしまうと書いてあります。1990年代になるまでは、葉酸というのはあまり重視されていませんでした。
 ただ、解説書に書いてあるように、妊娠中に葉酸が足りないと先天性神経管欠損、無脳症とか二分脊椎といったような先天異常を起こしたお子さんが生まれるということで、妊娠中に取りましょうということが主に話題になっていました。
 それが先ほどの女性に必要だということと関係していたと思います。

葉酸を多く取ればいい

 ところが1990年ぐらいから心臓病とか、がんのリスク予防に関係、多く取ればいいんだということがわかってきて、そのことと今日のお話はかなり関係します。
 どんな食品に含まれるかというと、ここに書いてあるようにアスパラガスとか、ブロッコリーとか、ホウレンソウとか、生のオレンジジュースとか、それからこの下の方にいくとレバーとか、一見してカリウムとかリンが多そうなものに多く含まれているのですね(スライド2)
 そこが非常に葉酸摂取を食べ物で促すということが、特に透析をやっていらっしゃる方にとっては難しくなるのです。透析やっていらっしゃる方に動脈硬化性疾患が非常に多くて、心臓とか、脳とかの病気に気をつけましょうということはずっと言われていると思います。その原因としてコレステロールとか、年齢が高くなってきているとか、肥満の影響があるとか、糖尿病がふえているとか、それから高血圧があります。

 その中の一つにこのホモシステインという物質が、普通の方の3倍から10倍ぐらい高くなっているのだということがわかってきています。これは完全にわかっていることで、ホモシステインを下げれば動脈硬化が幾分か、進展を抑制することができるのではないかということもわかっていることです。ただ、どのようにして下げたらいいのかがわからないというのが難しいところですけれども。

スライド2

どんな食品に葉酸は含まれる

食品中の葉酸含量


食品名        

アスパラガス(缶詰)
ブロッコリー(生) 
ほうれん草(生) 
ピーナッツ(生) 
ビート(ゆで) 
オレンジジュース(生)
アーモンド(皮つき) 
芽キャベツ(冷凍) 
アボガド(生) 
ヘーゼルナッツ(皮つき)
分量 葉酸含有量(μg)

1 カップ    245
1 カップ    202
1  カップ    193
1 カップ    156
1 カップ    156
1 カップ    138
1 カップ    136
1 カップ    132

食品名

とうもろこし(缶詰) 
グリーンピース(缶詰)
くるみ(皮つき) 
ピスタチオ(皮つき)
鶏レバー(ゆで) 
カリフラワー(生) 
牛レバー(炒め) 
にんじん(生) 
たまねぎ(生) 

分量  葉酸含有量(μg)

1カップ       85
1カップ       82
1カップ       79
1カップ       73
1オンス(約30g)67
1カップ       55
1オンス(約30g)41
大1本       32
1カップ       25
 
*注:1カップ≒236t TheEncyclopediaofFoods,1994

ホモシステインは動脈硬化を促進する

 この物質はどのように血管に関係するかということをお話しすると、ちょっと難しい話になってしまいますけれども、その機序は、いわゆるコレステロールに作用する血管の壁にますますコレステロールをくっつけてしまうとか、血管を厚くしてしまうとか、それから血管のコラーゲン繊維といったようなもので血管を硬くしていくとか、そのようなことが、このホモシステインというものが高いと起こり、最終的に動脈硬化をどんどん促進していってしまうというのが問題だと言われています。

スライド3
スライド4

 そこで、ホモシステインって何ですかと言うと、後でちょっと簡単な図が出ますけれども、メチオニン、アミノ酸の一種ですね(スライド3)
硫酸が入ったようなアミノ酸の代謝物ですね。それが動脈硬化を進展させる独立した危険因子だと言われていて、5マイクロモルパーリットル上がると冠動脈がやられると言われています。
心臓病のリスクが1・6倍上がって血清コレステロールが20ミリ上がったぐらいに相当すると言われています。この5と20というのを覚えておいていただいた方が後のスライドを見るときに役立ちます。
 コレスレロールが20上がった40上がったというと結構、先生方も含めて騒ぐわけですけども、ホモシステインというのを一般はほとんど計らない。検査会社ですぐ計れるのですが、計らないので、ご自身のホモシステインが一体幾つぐらいかというのは、なかなかわからないのです。

 しかし、これが高いということはコレステロールが上がっているのと同じくらいに悪いことなのだということがわかっています。

血漿ホモシステイン濃度、動脈硬化を促進してしまうホモシステインという物質が上昇する因子というのは、先天的な異常というのがある。これは生まれつきということです。後はお年をとるとか、男性には多いとか、喫煙、コーヒー、アルコールの摂取が多いとか、運動不足であるとか、ビタミンが減っているとか、それから高血圧とか、糖尿病とかというのに加えて、この腎不全というものが非常に重要な因子を持つのですね(スライド4)

 大体、正常の方が先ほどの数字で言うと10マイクロぐらいのところが透析の方だと30〜40という方が結構多いですね。これもちょっと難しい話ですけれども、何で上がるかというと、このメチオニンとホモシステインというのが、やりとりをして、分解して代謝が行われるわけですけども、このやりとりをする酵素、葉酸と関連する酵素にどうも腎不全が影響するのではないかと言われています。

 それは余りはっきりわかっていなくて、例えば尿が出ないから、ホモシステインが上がってくるということではなくて、あくまでもその代謝が抑制されているということが原因じゃないかということが言われています。
 それで、一体どのくらいからそのホモシステインが上がってくるかというと、これは私たちの病院での患者様に協力していただいたデータです(スライド5)
 クレアチニン・クリアランスという検査値で見ると、これゼロと言うと腎機能が廃絶しているということになるわけですけども、縦軸がホモシステイン濃度という、先ほどの動脈硬化促進因子の濃度になるわけですけれども、どうもやはりクレアチニン・クリアランス30ぐらい、20〜30のところ血清クレアチニンでいうと幅がありますけれども、3とか4とか以上のところになると、どうも動脈硬化促進因子が上昇してきているのではないかということが、わかってきました。

スライド5

腎機能が落ちるとホモシステイン濃度が上がる

 ですから透析に入る前から少しずつ腎機能が悪くなるのに付随して、この濃度が上がっているのだということをまず覚えておいて下さい。
 単純に比較してみても、正常者と腎不全の方では先ほどお話したように大体10ちょっとくらいが正常で、これは透析に入っていらっしゃらない腎不全保存期の方で20ぐらいになっているわけですよね。先ほどお話したように、これが5違うとコレステロールが20上がるのに相当するぐらいの動脈硬化促進因子になるというので、この時期でかなりやはり差が出ているということがわかっていただけると思います。

斉間先生の講演を熱心に聞く皆さん

 それで、これが透析の方のデータですが、全体で43名の方で計らせていただきました(スライド6)。繰り返しますけれども正常が10前後のところが、全体でならすと44ぐらい。それを心臓病とか脳血管疾患を過去にやったことがあるか、ないかということでわけて見ると、やってない方はやはり低いのですね、35ぐらいです。そういうことをやったという方はやはり72です。倍近く多くなっていて、そのことだけが原因かどうかはわかりませんけども、やはりこの血漿ホモシステインの濃度が高いということと、動脈硬化性疾患の起こり方と関係するのではないかということがこれから見てもわかります。

 男女で比較しても今まで言われているように男性と女性だと、女性の方が低くて男性の方が高い。それから葉酸ですね。葉酸が多くなればどうもこのホモシステインは下げられるということがわかっているのですが、どのくらい多くなれば下げられるかというのはまだよくわからないのですね(スライド7)

 ここが葉酸の濃度の正常範囲で、こちらが葉酸の濃度が高くなる方ですね。これはホモシステインの濃度になるわけですけれども、葉酸の濃度が高くなってくると、やはりホモシステインの濃度がどうも下がってくるらしいと。ただそれも正常範囲のレベルでの葉酸の濃度ではなくて、かなり葉酸の濃度が高めでないと、ホモシステイン濃度は下がってこないのではないかということはある程度いえる関係だと思います。

スライド7


カリウムとか、リンが多い食品に葉酸は入っているということで、透析患者さんのホモシステイン血漿が高いことを食事療法で改善することができるかどうかということを検討してみました。
それでまず食事指導に協力的だった方12名に葉酸の摂取を指導して、4週間後の血中の葉酸、ホモシステイン、リン、カリウムを比較検討してみました。葉酸を多くとる指導をして、葉酸値が上がってホモシステインが下がれば目的を達するわけです。
加えてカリウムとかリンの濃度が上がらないということが条件になるわけです。




スライド8


 やり方は毎日の食事に50グラム程度葉酸の多い食品を追加して、葉酸摂取量をふやす指導をしました(スライド8)
カロリーとか、リンとか、カリウムは皆さんが普通先生方に指導を受けているのと大体同じレベルでの話です。葉酸は大体どのくらい入っているかというと、左が日本ですね、右がアメリカで、パンや御飯とかとか食べると、そこに葉酸が添加されていて、多くとれるようになっています。
それは国民全体に葉酸を多くとらせることが必要だということが90年代の終わりにわかって、法律で葉酸がすべての御飯とか、パン類には入っています。日本では入っていないので、葉酸を多くとっていただくためにゆでたホウレンソウ、アスパラ、インゲンなどが必要になってきます。これも同じですけれども、結局ホウレンソウとか、アスパラをゆでても結構カリウムが入ってしまうので、その辺の加減が難しいということです(スライド9)

スライド9

カリウム・リンを上げずに葉酸を多く取ることが大切


 結果としては、50グラム多く葉酸の多い食事をとってもらったが、リンの摂取が715〜746にふえただけ、カリウムも1716〜1798までふえただけという、そんなに危険なレベルには上がらなかったということはわかりました。安全性に関しては食事指導しても問題はない。血液の中のリンの値もほとんど変わってないし、カリウムの値も変わっていません。

葉酸の濃度は血液の中で上がったのかというと、指導すると10・5から13・1まで上がったのですが、統計学的に優位な変化ではないです。肝心のホモシステイン値が下がって欲しいわけですけども、結果としては葉酸摂取を指導しただけではほとんど変えることはできなかった。下げることができなかったというのが食事での結果でした。

これ全体をまとめますと、指導によって葉酸の摂取は有意にふえました。血液の中の葉酸値もある程度ふえる傾向にありました。ところがホモシステイン値は食事だけでは下がりませんでしたというのが結果で、透析をやっていらっしゃる条件下で、カリウムとかリンの制限がある中で、食事だけでは、動脈硬化の原因になりうるホモシステイン濃度を下げることは、どうも難しいのではないかというのが2001年に私たちがやったデータでわかりました。

従来の腎不全食献立では葉酸が不足

講演する斉間先生


 それで次に検討したのは、「臨床透析」とか、「家庭でつくる透析食」、「食生活」とかいう本が日本では出ています。代表的なものの10献立を各季節ごとから選んでみて、それをコンピューターで計算して、エネルギーが2,000前後、リンが700、カリウム2,000以下が、透析の献立表としては非常に重要視されて提示されていますが、その中に一体葉酸は幾ら入っているのかというのを計算してみると、かなり少ないです。300、200、196、最大で400、一番少ない献立表だと134しか入ってないです。

日本で普通の若い女性で妊娠する可能性のある人に推奨されているのが大体200ぐらいですので、そのレベルにも達してないぐらいです。リンとかカリウムの制限を重視することによって、食事からは少ない量の葉酸値しか摂取できない状況がつくり出されているということは、一般的な献立からもいえるようです。

 もう少し葉酸を投与する方法はないかというので、葉酸の製剤とかサプリメントを使って検討してみました。74名の方です。86カ月ですから7年ぐらい、透析で、平均年齢62歳の方で明らかに動脈硬化性疾患を有した11例と、これは心臓病があるとか脳卒中の経験された方とかという方と、それからそういうことがない方との2群にわけて、余り危険因子がない、私たちの言葉で一次予防・二次予防というのですけども、まだ何にも起こしてない方に起こさないように設定するのが一次予防で、1回でも心臓狭心症を起こした方は、繰り返さないようにすることが二次予防ということですが、一次予防の方には栄養食品から1日葉酸400マイクログラム、飲んでいただくことにして、先ほど出た薬、あれが大体1粒200マイクロですから1日2粒飲んでいただく。ただこの400マイクログラム1日というのは、この前のスライドで見ておわかりのように1日量をはるかに超えるだけの葉酸を飲んでいただくことになるわけです。
一方危険度が高い方たちは5,000マイクロ5ミリグラムを週3回の透析ごとに飲んでいただく。つまり1日当たり大体2500ぐらい飲んでいただくことで1年間計ってみました(スライド10)

スライド10

 動脈硬化性疾患のない方の平均が28、動脈硬化性疾患があった方は74と2倍以上の差があって、この人たちにはかなり高い用量で葉酸を投与した方がいいではないかということが言えると思います。

それで葉酸投与したことによって葉酸値がどのようになりますかというと、高用量1日当たり2500投与した群では10ぐらいだったものが40から50ぐらいには上がって推移しました。400マイクロ1日飲む人たちも、30弱ぐらいのところまで上がって推移して、高投与群にしても低投与群にしても葉酸を投与したことによって、血液中の葉酸の濃度は上がっていることがわかると思います。

葉酸とビタミン6、ビタミン12の併用でホモシステインが正常まで下がる


 一方、ホモシステインがどうなるか、下がってもらうことが最大の目的なわけです。高用量投与群ではやはり見事に下がります。70ぐらいから30ぐらいのところにストンと下がります。正常よりはかなり高いですけれども一応1日置きに5ミリグラムの葉酸を飲むことで約ホモシステイン値は半減して、危険の低かった人たちとほとんど同じぐらいのレベルにまで下げることは可能になるのです。

スライド11

それではまだ不十分かもしれないと、さらに用量を大きくしてみようということで次の検討をしてみました。

低用量群の方は1日400だったものを1日800飲んでいただく。ですから4粒です。200マイクロのものを4粒飲んでもらって、高用量の方はビタミンB6とかビタミンB12というものを追加して週3回投与しました。
これは複雑な話ですが、葉酸だけではどうもある程度の量までいくとホモシステインが下げきらないと、それにビタミンB6とかビタミンB12を合わせて投与することで、もう少し下げられるのではないかというのは機序的に言われています。

同じく計ってみました(スライド11)。高用量群では73ぐらいあったものが一たん5,000マイクロ1日置き投与で29までストンと下がる。そこからはなかなか下がりきらない。けれどもそれがビタミンB6、ビタミンB12を使うと26プラスマイナス8ぐらいですから、ある人たちは正常域まで達するぐらいのところまで下げることが可能となっている。
低用量群では400で投与していたものを800にふやしてみると葉酸の濃度は上がります。葉酸の濃度が高用量群に近いところまで上がってくる。そうすると26ぐらいあったのが21まで下がる。これもかなりの数の方が正常域に近いところまで達してきていると考えられます。
つまり800ぐらい使うと30弱ぐらいのホモシステイン濃度の方は正常に近いぐらいのところへある部分の方は達することは可能になってくる。ということで、これはかなり意味がある数字かもしれません。

 アメリカにおいては先ほどお話しましたように先天性代謝異常のリスク軽減のために葉酸を1996年から穀類100グラムに対して140マイクログラム付加するようにということが決められて、国民全体の葉酸の値が上がっている。葉酸を投与すればホモシステインが下がるということがわかってきていますが、ホモシステインが下がることで、最終的に脳卒中であるとか、心臓病にかかる率というのが減るかどうかというのはまだ始まったばかりですから、後10年とか20年とかすると成果が出てくるのではないかと思います。

質問する会員

食品成分表第5訂版で葉酸含有量の計算が可能


 日本でも食品成分表というのが何年かごとに改訂されているのですが、2000年に改訂された第5訂というものから初めて食品の中の葉酸含有量というのが出てきたのです。
今は栄養士さんであれば、どの食事にどのくらいの葉酸が入っているかということは、計算することが可能になっています。透析の方の血管性病変というのは90年ごろから随分報告されてきています。葉酸が慢性腎不全の方の高ホモシステイン血症を是正する点には疑問の余地はないのですけれども、投与量に関して、健常者の必要量自体に意見の相違がみられて、透析の方に対する投与量にしても見解の一致がないのです。葉酸だけではなくてビタミンB6、ビタミンB12の因果関係も重要で、その辺のバランスを含めてどのくらい投与していいのかについては、まだ統一的な見解が出ていないのです。
 一応まとめになりますが、腎不全の存在は透析患者のみならず、透析導入以前の比較的早期より動脈硬化の危険因子である血漿ホモシステイン濃度を上昇させています。葉酸とか、ビタミンB6、ビタミンB12の摂取により血漿ホモシステイン濃度を正常化させることは困難、難しい、だとしても、その濃度を下げることが可能であることは、私たちの、いろいろな研究から明らかである。今後は葉酸のみならず、あわせて投与するべきビタミンB12、ビタミンB6などの投与量について検討する必要があるだろうと思います。

サプリメントからの葉酸摂取の指導をすべき

 ほとんどの施設では、目標値が定まらないために、現在の腎不全の食事療法指導の中に葉酸摂取についてはあまりふれられていないのです。少なくとも腎不全保存期の患者の食事指導においては、カリウムとか、リンなどはまだそんなに制限する必要がないわけですから、食事からの葉酸摂取ということを考慮して指導すべきですし、それからカリウムとか、リンの厳しい食事制限下にある透析患者さんにおいては、やはりサプリメントからの葉酸摂取を勧めるべきではないかと考えています。

腎不全の補助食品は各種メーカーがいっぱいつくっていますけれども、そういうものの中にも葉酸添加が余り検討されていないのです。ですから、米国においては一般的な穀類に添加されているように、葉酸の添加ということを検討する時期に来ているのではないかと思います。

 私はある程度の量は、葉酸というのは、機序的にいっても、一般の方でも食事からとるよりも、ある程度はサプリメントでとらないと吸収されにくいということが言われていますので、メーカーはいろいろありますけれども、葉酸のサプリメントを、少し試してごらんになるというのは必要ではないのかと思います。

 血液採取に協力いただいた私たちのところの透析導入前の患者様とか、医療生協高田馬場診療所で維持透析をされている患者様とか、スタッフの皆さんの協力に感謝いたします。このデータは皆さんの協力で出たデータです。

東腎協 2004年7月25日 154


最終更新日:2004年10月11日
作成:K.ATARI