長期透析患者の合併症(U)
監修 あけぼの病院理事長 南郷 英明先生
透析を長くしていると、普段使わない言葉を耳にするようになります。その殆んどが合併症の話です。今回は合併症でも重いほうですが、普段の生活習慣がより大切になると思われます。発生が透析導入後、約10年〜15年が大体の目安になります。
感染症
透析患者さんは、一般に感染に対する抵抗力が低下していますので、感染症にかかる率が高くなります。穿刺部からのシャント感染、尿量が少ない為に尿路感染、風邪をこじらせて起こる肺炎、結核菌の感染などがあります。
常に身体を清潔に保ち、うがい・手洗いの習慣、十分な透析、十分な栄養、そして何よりも体力をつけることが大切です。
高カリウム血症
透析患者さんは尿にカリウムが排泄されないため、カリウムを多く含む果物などを沢山食べると血液のカリウム濃度が上昇し(高カリウム血症)、急に心臓が止まって死に至る場合があります。
普段からカリウムの制限に努めること、カリウムを多く含む食品を1度に沢山とることは、絶対避けなければなりません。
普段から透析前のカリウム値が高い人は(6mEq/以上)、カリウムを低下させるカリメートなどを服用して、常に安全なカリウム濃度に維持する必要があります。
ウイルス肝炎
すでに肝炎に感染している透析患者さんには、肝炎ウイルスに対する治療薬としてインターフェロンという薬が開発されましたが、副作用が出ることもあり、透析患者さんには対応が難しいのです。肝炎の活動性や年齢なども考慮して、どうするか先生と相談して判断する必要があります。
一般に透析患者さんの肝炎の活動性は低いのですが、これは透析患者さんの抵抗力が低いためです。
副甲状腺腫大
慢性腎不全では二次性副甲状腺亢進症にあり、この状態が長期間持続していると、副甲状腺は常時分泌刺激を受け続けることになり、副甲状腺は次第に腫大してくるようになります。
積極的な保存療法でも、PTHレベルが低下しない場合には、副甲状腺摘出術(PTX)を行います。原則として4腺すべてを摘出し、一部の組織を腕などに自家移植します。
手術後は、活性ビタミンDとカルシウム剤の投与でコントロールします。
手根管症候群
長期間透析を続けていると、身体のあちこちにアミロイドと呼ばれる物質が沈着することがあります。手の関節や腱などにアミロイドが沈着して生じる代表的なひとつに手根管症候群があります。狭い手根管内にアミロイドの沈着が生じた結果、抹梢神経が圧迫されて起こります。
症状は、手のひらや指がしびれたり(特に寝起きや透析中)、ピリピリとした痛みを強く感じます。またバネ指といって、指がなめらかに伸縮できなくなります。更に進行すると、親指と小指を使って物をつかむことも出来なくなります。
手術により痛みやしびれは、ドラマチックに改善されます。但し症状が長期化していたり、症状がひどく重い場合、劇的な改善は望めません。透析の長期化により再手術を受ける例が増加しています。
2回に渡り代表的な合併症について説明しました。詳しくは担当医にお聞き下さい。
参考文献(透析療法マニュアル、平沢由平)(これからの透析ガイド、椿原美治)(透析のはなし、会屋忠信、秋澤忠男)
東腎協 2005年1月25日 156
最終更新日:2005年3月13日
作成:H.Suga