会員さん訪問第90回
常に目標を持ち前進し続けたい
個人会員
阿部 豊さん
なまえ あべ ゆたか
生年月日 昭和46年8月8日
透析導入 平成11年3月
今回の会員さん訪問は、広告制作会社に勤務しながら、青年部活動でも活躍し、
毎日の生活を精一杯に楽しんでいる、阿部豊さんにお話を聞きました。
障害を持っていても自立を
―正社員として就労しながら透析を行っているそうですが仕事は辛くないですか
阿部 透析導入前の27歳の時に現在の広告制作会社に入社しましたが、当時は体への負担が大きくきつかったです。ただ、気持ちが張っていたので何とか毎日の仕事をこなしていましたが、週末近くになると尿毒症で思考能力がだいぶ落ちていましたね。入社後、5ヵ月で透析導入となりましたが、その後は頭も体もスッキリして仕事も楽に出来るようになりました。
―透析導入で仕事への影響はありませんでしたか
阿部 導入時は2ヵ月程、会社を休職しましたが、会社も同僚も心良く入院を認めてくれました。障害者枠での入社でしたし、透析導入の可能性も会社に告げてあったので、仕事の面では安心していました。人事の仕事に就いているため、給料日前などは多忙ですが、現在はコンピューターも発達し、残業も少なくなったので定時で仕事を終え、透析に向えます。自分自身でのジレンマは少し有りますが、会社や同僚の協力も有り、仕事は順調に行えています。
―社会保険労務士の資格を取得したそうですが、仕事、透析とで多忙ななかでの受験は負担が多くなかったですか
阿部 社会保険労務士の資格取得の勉強は入社以前から進めていたのですが、入院などで思うように受験ができず、昨年、志3年目で資格取得が達成できました。初めに資格取得を考えたのは、就職への不安と、将来の自立を思ってです。障害者としての立場からも、社会保険、年金などの知識習得は自分自身の為にも必要でしたし、又、就職後も、体力等に不安が有りましたので、自立できる道を開くために資格を取得しました。ほとんど独学でしたので、仕事が多忙な時などは、挫折しそうな時もありましたが、大学の受験勉強より意義がある勉強でしたので頑張れました。自分の目標でしたので何とか乗り切れたと思っています。
闘病を乗り越え大学入学へ
―前後しましたが、病気との付き合いを教えてもらえますか
阿部 19歳のときに十二指腸潰瘍穿孔で緊急入院し手術を行ったのですが、院内感染(MRSA)から多臓器不全に罹り、1年間の入院生活を送りました。その後、はっきりとした因果関係は解らないのですが、入院中の治療方法や薬の影響からか、退院後の20歳の時期に蛋白尿が出るようになり、ネフローゼ症候群と診断され、腎臓病を意識するようになりました。ちょうど、大学受験の時期でしたが、半年間の自宅療養を言い渡され、自宅で大学受験のために勉強に励みました。もっとも、すぐに足がむくむなどの症状があり、外出もままならない状況でしたので、自宅での受験勉強のみで、受験日が退院後ほとんど初めての外出という状況でした。それでも、おかげさまで大学に入学できました。
―大学生活はどうでしたか
阿部 最初は大学に通うだけでも大変でした。1年生の時は必修科目も多く、朝早くからの授業は通勤ラッシュで辛かったです。又、体育の授業は運動制限で実技ができず教授に頼み込みレポートだけで単位を取らせてもらいました。学部は仏教学部でしたので、座禅が必修だったのですが、夏の坐禅は地獄でしたね。今、振り返ると苦しい事も多かった大学生活ですが、オーケストラ部に所属して多くの仲間も出来て、4年間で無事に大学を卒業できたことは私には強い心の支えになりました。
青年部の活動が支えに
―大学卒業後の生活は順調でしたか
阿部 就職活動は順調ではありませんでした。病気のことを正直に話したので内定をとる事ができず、ハローワークに通った結果、やっとアルバイトで土地家屋調査士事務所で働くことになりました。アルバイトといってもやりがいのある仕事でしたが、やはり自分の将来を考えると安定した仕事に就きたいと思い、3級障害者の認定を受け、1年半後、障害者枠で現在の会社に入社しました。
―入社後の透析導入との事ですがそのときの気持ちは
阿部 導入の覚悟はできていましたが、具体的な知識が無かったので不安はありました。シャントの手術の前日には、病院を抜け出し、青年部の座談会に参加したのですが、そこでは青年部の仲間に、多くの事を教えられ又、励まされ、とても心強く感じました。
―青年部との係わりは何かきっかけがあったのですか
阿部 私が腎疾患に罹ったことから母が東腎協の個人会員に加入したようです。導入前でしたが、母の勧めで青年部の交流会に参加し、就職についてのアドバイスを聞けたのが最初でした。仕事が多忙で青年部活動に参加できない時も多々ありましたが、青年部の仲間のおかげで、楽しい経験も数多くできました。
やはり、若い人達の患者会活動は必要だと思います。私も微力ながらも、現在は青年部の幹事を勤めさせていただいています。
花嫁募集中?
―仕事、青年部活動と多忙なようですが、将来の夢は
阿部 長年の夢というか、希望でした独立を昨年実現し、現在は池袋にマンションを購入して、1人暮らしを始めることができました。35歳位までには結婚をして、平凡な家庭を築きたいと考えています。残念ながら、具体的な結婚相手はいないので、これから探そうと思っています。多くの人に東腎協の存在を
―最後になりますが東腎協への要望はありますか
阿部 透析患者は本人も、家族も多くの不安を持って毎日を過ごしていると思います。患者会のない病院で透析を行っている方も多いので、どんな透析患者でも、東腎協の存在を知ってもらえるような、広報活動を繰り広げてもらいたいと思います。又、導入前の、まだ、東腎協に未加入の不安を抱えた方々の相談にも応えるような組織になって欲しいと思っています。
あとがき
とても爽やかな、前向きの考えを持った青年で、楽しいインタビューができました。今後も青年部の中心として、活躍下さい。
(取材・小野)
最終更新日:2004年7月15日
作成:M.Koseki