透析患者の検査値 A
どこの透析施設でも、月数回の採血をし、その検査結果が報告されていると思います。前々号につづき主な検査項目の簡単な説明と、透析患者における目標数値を記し、透析における自分の検査値をより深く理解し、食事を含めた日常生活(透析生活)の一助になればと思います。
アルカリホスファターゼ(ALP)
肝臓・骨・小腸に高い活性が認められるため、胆道系の障害や骨代謝異常・副甲状腺機能亢進症で上昇します。
とくに透析者にとっては、副甲状腺機能亢進にともなう骨代謝回転の指標とされています。
基準値は検査測定法によって違います。
透析者の基準値 JSCC法では 104〜338U/L
IFCC法では 30〜120U/L
GOT・GPT(AST・ALT)
肝機能をみるための一般的な指標となる検査項目です。
B型肝炎(この感染はHBs抗原を調べます。)やC型肝炎(HCV抗体で調べます)に罹患するとGOT・GPTが高くなります。その他に、心筋・骨格筋・白血球の障害でも、数値は高くなります。最近では酵素名称の標準化による国際的な委員会の勧告により、GOTをAST;GPTをALTと、呼称が変わって使われることが多くなって来ました。透析者は健常者よりやや低値を示す傾向にあります。
健常者の基準値は GOTで 10〜27 IU/L
GPTで 5〜33 IU/L
血清鉄(Fe)・フェリチン
生体内の鉄の過不足を見るのに有効な指標となります。Feは、一日の中での変動(日内変動)があり、一般的には、朝に高値になるとされていますが、例外も多いです。透析者は、健常者に比べFe値は低く、フェリチンは高い特徴があります。
Fe:鉄の過不足ない透析者で 正常の下限の値として 72.4±28.6ug/dl位と思われます。
健常者の基準値は
男 55〜163ug/dl
女 51〜139ug/dl
フェリチン:透析者で100〜300ng/mlが鉄欠乏や過剰がない状態と考えられます。
健常者の基準値は
男 13〜215ng/ml
女 12〜100ng/ml
総コレステロール(T‐cho,T‐ch,TC)
透析者でのT‐ch値は正常な事が多く、善玉コレステロール(HDL)は低いことが多いです。
コレステロールは、動脈硬化の危険因子の一つです。220mg/dl以上にならない様気を付けたいものです。
CRP
感冒や肺炎などの感染症や、リウマチなどの慢性炎症で上昇します。このCRPの経時変化はそれぞれの疾患の病勢とよい相関を示すため、その病勢の状態や治療効果や評価の指標としてつかわれます。
HbA1c
HbA1cは、主に糖尿病患者の血糖コントロールの指標として用いられ、血糖値以上に重要視されています。
HbA1cの基準値は4.0〜6.0%でこれは、過去1〜2カ月の平均的血糖値を反映しているため、1回の測定でこの間の糖尿病のコントロール状態を大まかに知ることができます。
糖尿病に合併する細小血管症(糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症)の発症・進展を防ぐには、この値を7%以下に保つことが望ましいとされています。
透析における基準値の設定は、その施設や医師の考え方によって微妙に違います。自分の検査値を理解する時に、その施設が用いている基準値を主治医にしっかり説明してもらい自分の検査値を理解して頂きたいと思います。
最終更新日:2004年2月17日
作成:K.ATARI