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特集 後退した都の福祉施策

マル障を中心とした障害者福祉施策見直し反対の取組みを振り返って

東腎協会長 糸賀 久夫

福祉も聖域にあらず具体的推移とその成果今後の課題

〜福祉も聖域にあらず〜

 心身障害者医療費助成制度(マル障)を中心とした障害者福祉施策の見直し反対の取組みは、会員のみなさんのご協力によってこれまでになく大きな運動となりました。

 昨年(1999年)7月27日に発表された東京都の「財政再建推進プラン」や、続いて8月に発表された「福祉施策の新たな展開」は、これまでの制度や施策を聖域を設けず、すべての事業について「存続を含めて根本的な見直しを行う」という厳しいものでした。この中には私たち透析患者の「生命と暮らし」を支えている大切なマル障や福祉手当などの施策が含まれていました。

 正式には11月11日に東腎協事務局に来局した福祉局障害福祉部長から、見直し案である局要求内容の説明を受けました。

 マル障は@所得制限の強化A自己負担の導入B新規65歳以上を対象外とする。福祉手当は@所得制限の強化A新規65歳以上を対象外とする。などの厳しいものでした。

 衛生局関係では東京都医療費助成制度(通称マル都・マル特)(マル障を所得制限により利用できない人が受けている)は、これまで、医療費の自己負担分を全額助成していましたが、見直し案の局要求内容は1割の自己負担導入を行うとするものでした。私たちは石原都知事の決断とスピードを武器とした半ば強引とも思える政治姿勢に危機感を強く抱きました。私たちの、できることは何でもやっていこうとの思いで、次のような取組みをしてきました。

 都議会各政党会派への要請、都各局要請、知事への要望書「私の願い」、各患者会からの団体請願、東腎協独自の請願、障害者団体との共同行動として都庁前での集会、座込み、都議会厚生委員会傍聴など、いまだかつてない大きな取組みとなりました。

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〜具体的推移とその成果〜

 知事への要望書「私の願い」は3708人の会員から協力をいただきました。苦しい年金生活の実態や、合併症で通院もやっとの思いで透析している会員から、マル障・福祉手当の見直に反対する「命の綱を切られるに等し」という切実な内容が多数寄せられました。

 都議会への請願書の署名運動は、短期間にもかかわらず、1昨年の青島都知事へのときを約1万人以上、上回る7万2001人もの署名が集まりました。会員の中には住んでいるの団地の中を足を棒にして集めた人、病院の他の外来患者に協力を呼びかけた人など、多くの会員の熱心な努力の賜物です。

都福祉局説明会の写真 都庁前で座り込みの写真
都福祉局説明会(1999年11月11日) 都庁前で座り込み(2000年2月23日)

 2月23日の平成12年都議会第1回定例会開催に合わせた「座り込みと人間のくさり都庁包囲行動」には高齢者、障害者各種団体と1緒に東腎協からも60名の会員が3加しました。当日は寒い日で、高齢者も多かったので、ホカロンを配り、体調を気遣いながらの行動でした。この集会の中で、私たちの実態と見直し反対の活動を理解していただくための訴えを行いました。これに先立ち全腎協、関東ブロックの各県にも署名の協力、都知事宛の要望書提出をお願いしたことも今までにない取組みの広がりでした。

 結果的には、福祉関係は異例とも言える早さで、12月22日に知事査定が行われ、マル障については住民税非課税の人は外来、入院(食事費を除く)とも従来通り無料となりました。これは、都議会各会派の低所得者に特別な配慮を求める要望や、障害者団体、都民の運動の成果です。

 新年、1月21日の知事査定では、衛生局関係のマル都、マル特(特殊医療の都単独助成分)の1割自己負担導入はなくなり、入院時の食事費のみを自己負担するとなりました。もし、1割自己負担が実施されていれば、私たち透析患者には高額療養費(マル長)で1万円以上の医療費は保険給付されるので、このマル都やマル特は全く利用価値のない制度になってしまうだけに、これを阻止できたことは、大きな成果でした。

 都議会閉会3月30日までの27日間、マル障や福祉施策の見直し反対のため委員会の傍聴、座り込みなどの取組みを重ねてきましたが平成12年度予算は、原案通り可決成立しました。マル障が昭和49年7月に発足して以来、私たちにとって大切な制度として定着していましただけに、この改悪で、対象者を減らされ、対象者も住民税非課税者を除き老人保健法に準拠する自己負担が導入されるなど、使いがっての悪い制度になってしまいました。

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〜今後の課題〜

 これまで、困難な時こそ、その運動の中から会員の結束が生まれ、会の成長があると信じて取組んできました。今後、マル障からはずされた人やマル障で自己負担の出る人は、マル都、マル特の手続きをすることになります。自分達の透析医療費を認識する上でも、各患者会が病院と協力しながら今年の9月1日(現在のマル障は8月31日まで有効)には、必要な手続きをもれなく、終わっているようにしましょう。

 これまでの、取組みの中には、不充分な点もたくさんあったと思いますが、医療、福祉の後退をこれ以上許さないために、ますます会員の結びつきを強め、多くの透析患者の結集をはかりたいと思います。

東腎協  2000年5月25日 No.133

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最終更新日:平成13年3月16日
作成:Tokura