| 司会 | 川口 良人 | (東京慈恵医科大学第2内科教授) | |
| 1、挨拶 | 長岡 常雄 | (東京都衛生局医療福祉部長) | |
| 2、講演 | (1)「腎臓病をどのように発見し、予防するか」 | ||
| 浅野 泰 | (自治医科大学腎臓内科教授) | ||
| (2)「透析導入後の身体的合併症と自分で出来る注意点」 ―より良い社会復帰をめざして― |
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| 秋葉 隆 | (東京医科歯科大学第2内科血液療法部講師) | ||
| 3、体験発表 | (1) 慢性腎炎で治療中 | 島影 信正 | |
| (2) 透析導入初期 | 小野 協子 | ||
| (敬称略) | |||
| 日 時 | 平成10年6月15日 | 午後2時〜5時 | |
| 場 所 | 東京国際フォーラム | ||
| 主 催 | 東京都 (社)東京都医師会 (社)日本腎臓学会 東京都腎臓病患者連絡協議会 (社)日本腎臓移植ネットワーク |
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(司会)東京慈恵会医科大学第2内科教授 川口 良人
まず最初に、会を開催していただいた東京都、東京都腎臓病患者連絡協議会並びに腎臓に関わる仕事をされている医師の方々にお礼申しあげます。特に第41回の日本腎臓学会の会長をされている丸茂先生は何とかして腎臓病を防ごう。もし万が1、腎臓が悪くなった時でも、できるだけ通常の健康人と同じような生活を送れるようにしようと、長い間腎臓病研究と治療に取り組んでこられました。
このようなことから、「腎臓病を考える都民の集い」に学会として参加することが出来たのではないかと思います。
今日は、東京都衛生局の長岡様、東京都医師会の鈴木様、それから、東京都腎臓病患者連絡協議会の糸賀様の3人の方がお見えなので、代表して長岡様にご挨拶いただいた後に、お2人の先生に講演をお願いし、また、お2人の患者さんから腎臓病の体験を発表していただきたいと思います。
なお、会の終了後、午後4時10分から5時10分まで、別の場所で医師と栄養士による相談会を行いますので、是非この機会を生かして欲しいと思います。 (拍手)
東京都衛生局医療福祉部長の長岡です。本日は多数の方にご出席をいただき「腎臓病を考える都民の集い」を開催できましたことを主催者の1人として、大変喜んでいます。「腎臓病を考える都民の集い」は12回目を迎えましたが、今回は、日本腎臓学会学術総会の丸茂会長のご配慮で、第41回日本腎臓学会総会に合わせて開催することになりました。患者さん、東京都医師会、日本臓器移植ネットワーク、行政に加えまして、日本腎臓学会が共に本日の集いを開催しましたことにおいては大変深い意味があると考えます。
東京都では都民の命と健康を守るため、さまざまな施策を実施しておりますが、本日の「集い」もその1つとして、「腎臓病と上手くつきあう法」を本テーマに浅野、秋葉両先生から講演をしていただき、また、患者代表の方からも体験談を発表いただくことになっております。司会の労を取っていただく川口先生には厚く御礼申しあげます。
さて、皆さん、よくご存じのとおり、人工透析を必要とする腎不全患者数は、全国でおよそ170、000人、東京都でも17、000人を超えており、年々増加しています。現在腎不全に対する根治療法は腎臓移植しかありません。昨年10月に臓器移植法が施行されましたが、その後も亡くなられた後に提供していただく腎臓の数ははるかに少なく、腎臓移植を希望する方々に十分に応えられないのが現状です。この機会をお借りしまして、腎臓移植に対する皆さまのご理解とご協力をよろしくお願いします。
最後に、本日の「集い」を通じまして、都民の皆さん方が腎臓の大切さ、腎臓病の予防、早期発見についてご理解をさらに深めていただくよう再度お願いして私の挨拶といたします。本日はご参加くださり大変ありがとうございました。(拍手)
(司会)どうもありがとうございました。では、早速、講演に移りたいと思います。最初に自治医科大学腎臓内科の浅野教授にお話しをお願いします。(拍手)
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皆さん、こんにちは。「腎障害をどのように発見し、進行を予防 するか」について早速お話しさせていただきます。まず、腎臓がどのようになっているかということを最初にお話をしないといけないと思います。ちょうどお腹の左右に握りこぶし位の大きさで、少し平たくしたようなものが2つあります。これが腎臓です。腎臓は血液が大動脈から入ってきて、ぐるっと中を廻って大静脈に出る間に、尿を作って膀胱に溜めて尿道から出す基となっています。お腹側より背中に近く、お腹の方からは触りにくい位置にあります。
腎臓を縦切りにしますと、ちょうど握りこぶし位と申しましたが、そら豆のような形をしています。実際にもう少し細かい部分を見ますと、顕微鏡でやっと見えますが、動脈から入ってきた血液が糸状のようになっている毛細管という所を伝わって、静脈へ戻って行くのです。この毛細管と尿細管がネフロンと言う1つの単位になってます。昔の教科書ですと、片側で100万個あると言われていますが、今は70万から80万位と言われています。いずれにせよ、ネフロンが数多くある非常に微細な構造を持った組織なのです。(図1)
もう1つ、腎臓の大事な働きは、水分とか塩分、これは電解質と言いますが、それらの余分なものを身体の外に出す働きです。もし、出さなければ高血圧の原因になることは皆さん知っていると思います。チンパンジーは果物等を食べていますから、食塩は1日、1グラムか2グラムしか取っていません。そのチンパンジーに食塩を1日、15グラム位を半年間与えますと、60%以上のチンパンジーが高血圧になったという話です。
皆さんは塩辛い物を食べても、すぐに血圧が上がるわけではありませんが、では、何故むくみが出るのかと言いますと過剰な塩分は尿から出されますが、腎臓の悪い人は水分を出せない状況から高血圧だけでなく、むくみの症状が出てくるのです。
他に、食物が口から入ってきて消化・吸収・利用されますと、どうしても血液が酸性に傾いて来ます。中には「アルカリ食を食べていれば良い」という人がいますが、食物で補えるような量ではなく、アルカリ食では不十分です。物を食べている以上はどうしても酸性に傾きます。この酸、アルカリを排泄したり、調節したりするのも腎臓の大事な仕事なのです。
後ほどお話しますが、腎臓はホルモンやビタミンDを作る働きもするのです。これら腎臓の働きをまとめて話しましたが、1番に尿を作ること、老廃物の排泄とタンパク質の代謝です。ほかにも余分な食塩を出す、アルカリだ、酸性だという血液のPHも腎臓が調整
します。
実際には腎臓が分泌するホルモンによって調節と分解が行われます。従って、腎臓の働きが悪くなるというのは、必ずしも腎臓自身ではなく、これらを調節するホルモンのバランスが崩れる状態でもあります。
実は、血圧をコントロールするホルモンも、1部の大事なホルモンは腎臓から出ています。また、腎臓が悪くなりますと、どんどん貧血になりますが、その貧血に対し、骨髄に赤血球を沢山作りなさいと指令するのも腎臓の中のホルモンが作用が行っているのです。それから、骨を強くするビタミンDも口から入つた物が、紫外線を浴びて作られますが、最終的にビタミンDとして骨に働くような形にするのも腎臓の作用なのです。もし、こういう機能が壊れてくると何が起こるでしょうか。
まず、排泄機能です。腎臓は体液を調節すると言いましたが、腎臓に障害が出ますと、血液に老廃物が溜まって最終的には尿毒症になります。さらに、体液の調節がとれなくなると、水分や塩分のバランスがとれなくなるので、むくみ等の症状が出てきます。
それから、血圧の調節もしていますが、腎臓の機能が少なくなりますと、大体が高血圧になります。さらに、赤血球を作る造血ホルモンが働かなくて「腎性貧血」という貧血を起こします。さらに、ビタミンDを活性化することが出来なくなるので、カルシウムの吸収が悪くなり、骨がもろくなるなどいろいろな症状が出ます。つまり、腎臓というのは、1度悪くなりますと全身にいろいろな影響が出てくるので、極めて大切な臓器と言えます。
では、「慢性腎不全」という病気の話をしましょう。腎臓病の種類には慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、それから最近特に増えてきている糖尿病性腎症また、本態性高血圧が10年、20年続いて起こる腎硬化症などがあります。これらの病気が進行しますと「慢性腎不全」になり、尿毒症になるのです。
慢性腎不全となる原因は糸球体が壊れる慢性糸球体腎炎、血管に病変がある本態性高血圧や動脈硬化症などが考えられます。他にも原因があります。膠原病(全身性エリテマドーテスなど)糖尿病、痛風。また、鎮痛薬を長年飲んだために腎臓が悪くなることもあります。
我が国の慢性腎不全による透析患者数は17万人を超えています。日本の透析が始まって約30年の歴史がありますが、どんどん増えています。これは非常に驚くべき現象で、いろいろな意味で社会問題も含めて考えねばならないことだと思います。
腎臓障害の進行はなかなか完全に止めることは出来ません。いろいろな薬物も使われていますが、完全に抑えることが出来ないので多くの方々が末期の腎不全まで行ってしまいます。健康な人の糸球体が100%位だとすると、だんだん、腎臓が悪くなると70、50に落ちてきます。50で腎臓の働きが半分位になりますと、大体血液中のクレアチ2ンが上がってきます。
ところが、腎臓の機能が半分位になっても、病院で、腎臓の働きを適切に検査しないとわかりません。また、殆ど症状が出ませんから、皆さん気付きません。夜間にトイレに行く回数が増えて来たら最初の注意信号です。但し、夜間尿にはいろいろな原因がありますから、全部が腎不全とは言えませんので、医師の診察を受けることが必要です。
大体70才から80才になりますと、特に病気のない人でも、糸球体の濾過機能や腎臓の血流は半分位に落ちていますから高齢者はどのような生活をしなければいけないか、この後にお話ししようと思います。
同じ病気でも、老化現象で進行が早まります。慢性糸球体腎炎にはホルモン剤を使ったりいろいろ治療をします。血液の凝固するのを抑える薬を使う場合もあります。また、血液の流れが悪い場合は、血圧を下げる薬を使います。

もう1つ大事なことは食事療法です。医師や栄養士、保健婦の指導を受け、自己管理して下さい。腎臓の悪い方でも、頑張って食事療法をすれば、透析導入を先にのばすことができます。食事ではタンパク質と食塩の制限です。糖尿病の人は糖質も制限しますから、「何も食べる物がない」と怒られますが、個々の問題については栄養士さんと相談して下さい。脂肪は太る原因ともなりますが、脂肪自身が酸化すると腎臓にも悪いことが最近言われています。
昨年だったと思いますが、厚生省の研究班が実施したデータによれば、腎臓の働きが10%から15%に低下したのを放置すると、2年位でゼロになります。ところが、タンパク質を体重1キログラム当たりO・4から0・5グラム位に抑える、例えば、体重60キロの人ですと、30グラム以下にする。
非常に厳しいですが、これをやりますと透析導入を7、8年先に延ばすことが出来ます。(図2)

最近は糖尿病性腎症による透析患者が非常に増えました。昨年秋、厚生省の調査で糖尿病患者は690万人位、その内医師の治療を受けていますのが150万人、予備軍を入れると1、300万人位います。さて、これから1体どうなるのか非常に心配になってきます。
平成8年度と6年度に約30、000人を対象に、尿中のタンパク量が2プラス以上、血清クレアチ2ンが1・4グラム/デシリットル以上で大体、腎機能が半分になった人、尿タンパクがプラスで、空腹時血糖値が140以上、もう糖尿病で腎臓がそろそろ悪くなっている人を対象にアンケートを実施しましたところ、751人、全体の2・5%に異常が見つかりました。
今度は、異常者を対象にアンケートを取り、576人、77%の人から回答を得ましたが、内訳は男性65・1%、女性は34・2%異常がありました。男女比率は2対1位ですが、実際に受診した人の比率は女性の方が2倍位多く、逆の言い方をしますと、男性の異常者数が2倍で、受診者数が半分ですから、4倍位悪いということになります。
これを見るだけでも、女性の方が6〜7年長生きするのが良くわかります。あとは年令別ですが、女性は40代、50代の受診者が多く、男性は40代から60代前半が社会に出て働いている人が大多数のためか受診しません。65才位から仕事をリタイアしてから受けるので、最終的には高齢者を対象にしたものと理解いただければ良いと思います。
ポイントを説明をしますと、「異常があることに対して医師の説明を受けたか」という問いに、約83・3%が「受けた」と答えています。これは、平成6年の調査では約半数の人しか説明を受けていなかったのです。
さらに、「継続的な治療、検査を受けているか」という問いには、約半数の人しか受けていませんが、平成6年には
僅か17%、1部調査項目がちがいましたが、2割に満たない程度でした。
この2年間いくつかの努力をしたお陰で増加したものの、まだ半数は治療、検査を受けていません。「何故受けないか」と聞くと、3分の1から半分近くが「自覚症状が無いから」、40、50代に「忙しいから行かない」が若干いますが、そんな答えになっています。これには、もう少し我々医師会の先生方にも協力して欲しいと思いますし、皆さんも疑問に思った場合には、腎臓の専門医に尋ねることが必要です。
腎臓病、糖尿病には食事療法を実施しますが、食事療法について「医師の指導を受けたことがあるか」という問いには「受けたことがある」が3分の2で、「受けていない」人が3分の1もいるのです。私達は宇都宮の駅前に食事指導の場所を設けたり、講演会を開いたり、治療法について保健所から個人的にメッセージを送ったり、2年位掛けて受診率を上げましたが、まだ50%、これを如何に高めるかが今後の課題です。
「腎臓病を予防するために」、では、何をしたらよいかというと、食事に気を付ける、風邪を引かない、酒・タバコを控えめにする。高血圧、痛風、糖尿病をキッチリと管理することです。例えば、糖尿病や高血圧の場合、専門の食事療法を実行している人が非常に少なかった。
現在、日本人はダイエットと言いながら、非常な美食家になっています。いろいろ美味な物が食べられますが、同時にいろいろな成人病に罹るようになりました。欧米に近い食生活に変わったにもかかわらず、運動量は大きく減っています。運動は歩くことからでも良いので、是非実行して下さい。また、体重の増減は、運動量と食べる量とのバランスで決まります。時間になりましたので終わります。
(拍手)
(司会)どうもありがとうございました。大変わかり易いお話でした。続いて秋葉先生の講演です。先生は腎臓が悪くなったときに、どのように治療していくかについて、非常に詳しい先生です。わかり易くお話下さいますよう、よろしくお願いします。
(拍手)
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東京医科歯科大学で腎臓の勉強をしています秋葉 隆です。今日この会場に来ている患者、市民の皆さんは健康志向、自分の身体についてよく考え、よく情報を集めておられる方々だろうと思いますので、今日は我々医師が透析導入後の患者の健康を取り戻すためにどのように努力しているかを話すことで、皆さんの参考になればと思います。
最近、医師の世界では「証拠に基づく医療」という言葉が流行っています。この言葉は「本当に良いものを患者に提供しよう」ということで、あやふやなこと、要らないことを言って患者に不安を与えないようにしよう。それを治療法に限って言い直せば、「本当に優れた治療法があるなら、その治療法をしっかりと患者に伝授しよう。もし、治療成績が同じようなものがいろいろあるのなら、1番副作用が少なくて、経済的にも見合う治療法を選ぼう。もし、絶対効く治療法がない場合には効果が期待できる治療法を第1に勧めよう」ということです。
3番目の治療法になりますと、これは効かないかもしれないということもありますが、医療の中には「やはり効かない、効く治療法がない」という場合もあります。このような考え方のもとで、皆さんにどのような治療を提供出来るかを話したいと思います。
もう既に透析を始めて、即ち、自分の腎臓だけではどうにもならない状態を我々は「慢性腎不全」という言葉を使いますが、慢性腎
不全患者は、血液透析療法、腹膜透析療法、腎移植療法の3つの治療法のいずれかを選択しなければ死に至ってしまいます。
日本でも腎臓移植を推進しようと皆で頑張っていますが、現実は年間800弱ですから、現在透析を受けている患者176、000人は勿論、年間新規に透析を導入する患者29、000人にもはるかに足りませんから、当面は腹膜透析か血液透析で生きて行かなければなりません。そして、これから増えるであろう腎臓移植のチャンスを待たねばならないということです。
そこで、今日は腹膜透析、血液透析、いわゆる透析療法の話をします。透析患者の死亡率は8%から9%位で少しずつ増えています。その話を聞くと「何だ、医者は頑張っているようで、どんどん死亡率が上がる、死ぬ人が増えるのはとんでもない」とか「医療費削減のために医療が悪くなっているのではないか」ととらえる方がいるかもしれませんが、その理由は、12年前と現在を詳しく分析しますと、現在の透析導入患者の平均年令が60才、患者の平均年齢は58才位ですから、この12年間で約10才高齢化しています。やはり、高齢の患者が増えたために、死亡率が増加している訳で、医療レベルが下がったのではありません。さらに、1983年頃は約15%が糖尿病性腎症でしたが、現在はその倍以上が糖尿病性なのです。即ちいろいろな合併症が多い糖尿病患者が増加したために、成績が落ちているのです。
そこで、1年生存率に与える導入年令別推移を統計的に調べますと、若い方(30才から46才)も高齢の方(65才から70才)も同1疾患では、だんだん死亡率は下がっています。
では、透析導入後にどんな症状が出てくるのでしょうか。既に透析を始められて、自分で感じられた方もいるでしょう。自分としては腎臓病としっかり付き合って、透析にならぬよう頑張っている方にとっては、あまり聞きたくないという気持ちでしょうが、透析患者の全身の症状としては、循環器の合併症として、息切れ、血液の合併症として貧血の類、透析の合併症として、だるい、足がつる。ひどくなりますと失神もします。
他に関節が痛い、骨が痛い、皮膚の症状ではかゆい、色が黒くなる。消化器症状として、食欲がない、便秘、感染症として風邪を引くと治りにくいなどの合併症が考えられます。
具体的な検査所見として、腰の横側からレントゲン写真を撮りますと、腰の骨は年と共に変形しますが、骨のないお腹の部分に縦に白く写っています。長期に透析を続けますと、血管の石灰化が起きて、さらに進みますと、血管の破裂、骨自体の破壊が起こる恐れがあります。
透析患者の胸部レントゲンで1見して心臓が大きくなっている場合、その状態を超音波で見ますと左側の心臓の壁、心臓の袋、心嚢、
心包とも言いますが、透析不足によって尿毒症性の心嚢炎を起こしています。また、高血圧に伴って脳出血、脳梗塞を起こします。
さらに、長期透析患者の症例で、関節内に、モコモコした物があり、これを顕微鏡で見ますと、β2ミクログロブリンというタンパク質が溜まっています。これが炎症を起こして、関節が痛むと「関節アミロイド症」です。 このように、透析に伴う慢性腎不全の合併症が起きているのです。
そこで、今、我々は腎臓の役割を血液透析、腹膜透析で補おうとしていますが、どうしてこのような合併症が起こるのだろうか。透 析不足なのだろうか、透析ではカバー出来ない機能によって症状が
起きているのだろうかと考えます。
1つは腎臓と同じ仕事をするには、1回4時間、週に3回の透析では足りない、もっと長時間透析をしなければいけない。それから現在の透析自体ではカバー出来ないものがある。例えば、貧血です。透析歴の長い方々は体験されていると思いますが、腎性貧血はエリスロポエチンの不足から起こります。そこでエリスロポエチンを補充・注射してやれば、改善するというのがその典型です。また、ビタミンDの不足に関しては活性型ビタミンD剤を補充する、補助療法によって良くなります。
そこで、透析不足、透析量が足りない、透析方法が患者にマッチしていないという理由をリストアップしてみますと、透析量では患者がより元気に、より健康な状態で生きられる可能性のある処方がないだろうか、透析方法では腹膜透析が良いのか、血液透析が良いか、さらに進めれば、血液濾過透析法、血液濾過法、即ちHDF、HFと言った新しい透析法の類が良いのか、従来の透析法のレベルをより高めて行う方が良いのか。
透析医としてはダイアライザーの膜面積はどの程度が良いか、滅菌法は何が良いのだろうか、透析液の成分、水処理には何が1番良いのだろうかなど患者の将来に良い成績につながるよう皆、研究しています。しっかりした、証拠をつかんだ上で、診療内容を高めようとしているわけです。
さらに、定期的な検査の数字は、大きく上がっても下がっても良くありません。心胸比が60%を超えると危険です。透析で大きく体重を減らさなければならない患者の死亡率は非常に高くなっています。逆に、食べられなくて体重がどんどん下がってしまう。体重を増やさないことは透析室では良いとされていますが、食べられないのであれば、また危険です。
社会復帰率について言えば、男性では毎日ではなくてもお勤めが出来る、女性はしっかりと家事が出来ることを基準にしますと、あ る程度透析時間が長い程、社会復帰率が上がってきますが、女性で中2日で8%、男性で5%以上も体重を増やしては社会復帰は困難です。
社会復帰が出来るか否かは「検査自体ではない。筋肉や自分のやる気だ」と考えるか方がいるかも知れませんが、実際は透析量と検査の良し悪しが大いに効いてくるのが実際の話です。同様にヘマトクリットが低くても悪い。エリスロポエチンを沢山使っている方は貧血状態が悪い方が多いことがわかります。血圧が高くても、心臓が大きくても同様です。
社会復帰につなげるには、良い透析液を使うことも重要です。良い透析液を使いますと筋肉が付いてくる、体重が増加する、ICAと言う成長ホルモンが増加してくるのです。1950年代透析が始まった頃は1回づつ医師が透析液を作り、不衛生な面がありましたが、今は完全に密封された形で作っていますから衛生的です。
「充分な透析をすることがよいことだ」というのはアメリカの統計でも言われていますが、アメリカの透析成績が日本、欧州に比べてあまり良くないので、日本の厚生省に当たるセクションが勧告を出しました。その内容を見ますと、「家庭医は透析導入の充分、前にに腎疾患専門医を紹介しなさい。シャントづくりから、透析開始の時期、回数、量など専門医に任せなさい」とか、「心臓血管死が多いので、高血圧や不良性貧血などでも危険因子を充分除きなさい。タバコを吸いながら長生きしたいというのは無理です。貧血はキッチリと治して腎臓の負担を軽くしましよう。栄養は充分に取る。透析も充分に受けましょう」ということを発表していまして、先程話しました、日本での「証拠に伴う医療」でわかったことと大体同じことを言っています。
今日、話したことは「自分で出来る注意点、より良い社会復帰を目指して」とは少し異なるかもしれません。より良い社会復帰をす るためには充分な栄養を取る。運動をして、社会に参加する強い意欲を持つことが最も大切なことです。しかし、特に透析を必要とする腎不全患者にとりましては透析を充分に受けていただきたいということです。そして、医師は質の高い医療を提供することが大切です。その前提の上で水制限、カロリー制限を守りながら美味な物を食べる。運動をすることによって食が増し、筋肉も増すでしょう。
そうして社会に参加して下さい。どうもありがとうございました。
(拍手)
(司会)大変わかり易く、特に今、腎臓病で悩んでいる方々へのメッセージとして話をされました。
ここで、浅野先生、秋葉先生に質問のある方はどうぞ。遠慮なく手を上げてマイクの前にどうぞ。
(質問)秋葉先生にお尋ねします。私は透析を始めて1年になりますが、先程、「色素沈着を防ぐ」ということをちょつと話されましたが、私の場合HF透析に変えてから若干色が良くなったのではないかと感じています。色素沈着は防ぐことが出来るのか否か。その方法があれば教えて欲しいことが1つ。
もう1つ、血圧の件で私のドライ・ウェイトは54・3キログラムですが、体重増加が1キログラム」位までは血圧が140台に収まっていますが、1・5キロ増えますと150と、中2日で2・5から6キロ増加しますと、170位になります。そこで、そこまで上げないために、体重増加を抑えるのが良いか、あるいは160位までは納得して、それ以上は薬に頼った方が良いか教えて下さい。
(司会)秋葉先生お願いします。
(秋葉)まず、前半の質問ですが、色素沈着を防ぐために、HDF、HF透析をした方が通常の透析患者より色が黒くならないことは報 告されています。この透析法もそれなりに良い悪いがあります。HFの出来る患者はある程度、血液流量が良いとかそれなりの適応がありますので、色の黒いのを防ぐために、全員がHFを選んで上手く行くとは限りません。ですから、主治医と相談の上で治療法を選択して行く必要があると思います。
それから、体重増加と血圧の話ですが、硬くなった血管をどうして柔らかくしようかという質問に置き換えられると考えますが、それはなかなか難しいことです。今はなるべくそれが硬くならないようにする。1言で言えば、動脈硬化を防ぐ、次に血管系の障害を出来るだけ少なくする方法で、予防的治療を行うことです。
では、もう血管が硬くなってしまった時に、厳しく水、ナトリウムの制限をして、体重を増やさないようにするか、食事をしっかりと摂る、栄養を摂った方が良いか。どちらが良いかという質問ですね。
これは自分で生活のパターンを決めて行く上で、非常に大切なことですが、ここで1概に「皆さんこちらが大切です」ということではなく、両方共大切なのです。あまり食べない、水、ナトリウムの制限のため食事をカットしてしまうのも身体に悪い、ですが、血圧を無視して好きなだけ食べるのも身体に悪いということだと思います。その辺のバランスを、皆さんの身体の状態と調和を取りながら生活するのが良いと思います。
(拍手)
(司会)先生方どうもありがとうございました。 次に、今日の第3番目のテーマ、現在腎臓病の治療を受けている方々に話していただきたいと思います。初めに、島影信正さんにお願いしたいと思います。
(拍手)
体験発表 (1) |
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島影です。昭和9年生まれ、今年64才になります。腎臓病に気が付きましたのが、16年前の会社の健康診断で、尿検査がありまして、「あなたの尿はプラスです」という診断がありました。
自覚症状が全くありませんので、今から10数年前は、会社近くのスポーツセンターで、毎週火曜日、木曜日は必ず2時間の運動を欠かしませんでした。また、土・日は休みですから、いずれかはゴルフ場に行くスケジュールになっていました。
ところが、5、6年前に他の病気で隣の大学病院に行ったところ、「尿検査、血液検査で、あなたのクレアチ2ンは非常に高い」と言われましたが、特に疲れることもなく、かまわないと思っていましたところ、「あなたの腎機能は血中クレアチ2ンが3になりました。これを放って置きますと、5年以内に透析に入ります」と言われ、ビックリしました。
透析は聞いた話では大変なことだ、と腎臓病についていろいろな本を読みました。すると、動脈と静脈の血管をつなぎ合わせシャントを作るのだとと言われ、「これは大変だ。透析を防ぐ方法は無いか」と医師に尋ねたところ、「食事療法があります」と答えられ、今から3年半前に茨城県取手市の共同病院を紹介され、診察を受けた後、栄養士の方々から食事療法のイロハを教わりました。
まず、米ですが、その病院で開発した、普通の米からタンパク質を除いた特殊米を食べる。ただ、この米は炊くと糊状になるため、澱粉米を混ぜ、100グラムを炊き、1日で食べます。それ以外のタンパク質を含めて、1回の食事でタンパク質摂取量は10グラム、
3食で30グラムです。医師の指示では40グラムと言われましたが、いずれにせよ働いている方にとっては厳しい食事管理です。
最初の診察ではクレアチ2ンが3・2でした。現在は4・6から 4・7で5未満です。途中、2年程前に胃ガンを患いました。胃カメラを飲みますと、医師から連絡があり、「ガンです」と言われ、取手病院に50日入院し、胃の3分の2を切除しましたが、おかげで退院の翌日には出勤できるほど元気でした。手術の際、外科の医師から「全身麻酔を1回しますと透析導入になる可能性があります。あなたは透析を受けますか、それとも死を選びますか」と聞かれましたが、当然、「手術をして下さい」と頼みましたが、手術後安静にしていた影響からか、クレアチ2ンは大きく下がりました。
ところが、昨年8月に風邪を引きまして、歩けない程に高熱が出まして、クレアチ2ンが6・2まで上昇しました。風邪は禁物です。しかし、何故か翌月からクレアチ2ンが徐々に下がり、4程度までになりました。
皆さん、私は医師や栄養士の指導で、低タンパク食事療法を実践しています。タンパク質の摂取限界数値をたまには出ることがありますが、大体少な目に摂っており、クレアチ2ンは大体平行線を保っています。年令と共に多少上がっている程度です。尿タンパクも
現在は0・8から0・9で安定しています。ロンゲスと言う薬を飲んで、私は尿タンパクが減少しました。
私は、腎臓病で病院に行きまして、手帳をもらいました。見たい方には後ほどお見せしますが、その手帳には各食品のタンパク質量が書いてあります。例えば、肉何グラムでタンパク質が何グラム、刺身3切れはタンパク質何グラムとかが書いてあります。最初は厳しいタンパク質制限ですが、慣れてきますと、さほど苦になりません。朝、夕は自宅で食べますが、昼食はスーパー等で電子レンジで温めれば食べられる物からタンパク質10グラム以内の物を選び、それで終わらせています。
外食は原則としてしません。暮れの忘年会、1月の新年会などはすべて断っています。旅行にはレトルト食品を1日分位持って行き、あとは宿泊先で出た物の中からタンパク質の少ない物を選んで食べますが、クレアチ2ンが5近くなり、疲れますので、最近は行きません。もう少しは頑張って仕事をしなければならない状況ですから。
低タンパク食事療法につきまして、ご質問があれば、私の知る限りのことは教えます。また、福祉関係では、既に「身体障害者手帳」
を取得し、65才の老齢厚生年金を受給できる年になるまで、障害年金を受けています。また、各市町村により異なりますが、いろいろな福祉を受けています。どうもありがとうございました。
(拍手)
(司会)ありがとうございました。 まさしく腎臓病と上手くおつき合いしている話を紹介しました。次に、小野協子さんから、初期の透析体験についてお話願います。
(拍手)
(体験発表) (2) |
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私は練馬区在住で、東海病院という透析施設で、週3回、4時間の透析を受けている小野協子と申します。これから私の体験談を話させていただきます。私は透析を受けて、まだ2年半、長年透析を受けている方々に比べれば、苦労も経験も少なく、このような場で話をするのは、本当に心苦しいのですが、現状と生活などについて話をさせていただきます。
まず、私の病歴ですが、学生時代は現在より20キロ位体重が多く、勉強よりスポーツで、非常に健康でした。20才で今の会社に
就職しましたが、精神的に弱かったのでしょうか、神経性胃炎など神経性の病気に掛かり、半年で15キロも体重が減少し、検査のために、東京医科歯科大学付属病院
に1ヶ月程入院しました。
検査の結果は何処にも異常がなく、無事退院し、5年間位は健康で仕事にも励んでいたのですが、平成元年に手や足に異常な痛みを感じ、腫れが出て近くの医院で診察を受けたところ、「捻挫か関節炎なので湿布かマッサージをして下さい」と言われ、そのような治療を行っていましたが、痛みと腫れが頻繁に起こるので、血液検査を受けたところ、腎臓に異常があることがわかり、直ちに東京女子医大を紹介されました。
受診の結果、慢性腎不全で腎機能は正常な人の4分の1程度であることがわかり、2、3年後は透析に入る可能性があるとのことでした。その後病状は安定していました。血液検査の結果も変わらず、尿量も多く、医師の説明から当分透析の心配は無いと思っておりましたが、平成6年に突然腹痛を起こし、お腹が腫れたような状態になりました。急遽、東京女子医大に行きますと、急性膵炎とのことで、2ヶ月半入院しました。
治療は絶食が最も効果があるとのことで、1ヶ月半点滴だけで、食事抜きで過ごしました。4種類の点滴を注入されましたが、胃や腎臓への影響は無く、検査は続けましたが、1年後に膵臓が痛み出し、また、女子医大で診察を受けたところ、今度は膵臓に膿胞ができていました。そこで、また入院し、1ヶ月半程内科的治療で膿胞が縮むのを待ちましたが、効果が現れないので、開腹手術でその膿胞を摘出しました。
但し、手術前の全身麻酔は、腎臓への負担が大きく、半年後位に透析を始める可能性が高いことを覚悟しました。膵臓の手術は無事終わりましたが、すぐ透析の状態になる可能性があるため、シャントを作りました。また、副甲状腺にも異常が出て、その処置も行ったため、その年は半年以上入院をしていました。
平成8年1月5日、始めて透析を受けました。それ以来、週3回の透析を受けています。ところが、平成8年の11月こんどは膵臓に石ができたため、また、女子医大に入院、12月には千葉大学に転院し、手術をしました。その時にシャントに血栓が出来たため、シャントを作り直しました。退院後、1年位すると、また、シャントに血栓が出来て、体調を崩し、10日間入院をしました。
このように、5年間入院ばかりしていましたが、入院で1番辛いことは親、兄弟に大変な心配を掛けること、大学病院の個室に入ると、親に多額の金銭的負担を掛けることです。また、千葉大に入院した時は、私の家から2時間以上も掛かるのですが、親、兄弟が週に2回見舞いに来てくれますと、うれしいのですが、辛い気持ちもありました。会社にも迷惑を掛けたので、何度も退院後は止めようかと思ったものです。
私も千葉大に入院した時には、何でこんなに遠い病院に入院しなければいけないのかとふさぎこんで、カーテンを閉め、ふて寝をしていますと、近くのベッドにいる白血病ながら元気の良い婦人から、「昼間からカーテンを閉めると陰気臭いから止めなさい」と言われ、「すいません、すいません」とひたすら謝りました。それから、その婦人と大変仲良くなって、気楽に話し合えるようになり、入院生活が楽しくなりました。
入院患者の方々は、話してみると大変親切で、退院の時は送別会を開いてくれたり、退院後は電話をくれたり、病気の内容は異なっても、入院していると、弱い者同志、皆で付き合おうという気持ちが生まれるのだと思いました。従って、退院が決まると、少しさみしい気がしました。
私は、慢性腎不全と診断された時は、ハッキリと原因が分かりませんでしたが、この病気になったのも、自分が自分に引き起こしたもので、自分の責任であることが理解出来ました。まだ若い時は少
し位無理をしても、健康が壊れるものとは思っていなかったのです。お酒を飲む、タバコを吸う、夜更かしをするなど身体に悪いことはすべてやり尽くしました。
私も透析を導入して2年半が経ちました。健常者と同じような生活はできませんので、仕事に対する考えも気を楽に持って、決して無理をしないようにしています。家のことでも、遊びでも普通の生活が送れる範囲内で行うようにしています。
病院の患者会、東腎協、全腎協に参加するようになってから、新しい世界が広がった気がします。私は今まで、学生時代の友人、同じ職場の人としか付き合っていませんでしたが、いまでは年令も職業も病歴も異なる腎臓病患者達と親しくなって、さらに、今年から東腎協の常任幹事にもなって、医療問題や福祉問題について国や都に働きかけなければならない立場になったと思っています。身体が動く範囲内で、いろいろな活動に参加したいと思っています。
私は同じ障害者の中でも透析の時以外は仕事はできるし、家で生活を送ることもできているので、生まれながらにして障害や重度の慢性疾患を持っている人は、もっと辛い思いをしています。私を励ましてくれた人達がいるように、少しでも人を励ますことが出来たら良いと思っています。病気と1緒に闘ってきた方々とこれからも頑張っていきたいと思います。
(拍手)
(司会)只今の話を聞かれて皆さんの参考になったと思います。
どうもありがとうございました。
(拍手)

以上
最終更新日:平成13年7月15日
作成:Tokura