| 第1部 | 糖尿病(生活習慣病)からの透析を遅らせる方法 |
| 講演@ | 日本医科大学腎臓内科部長 飯野 靖彦先生 |
松村 それでは、第1部講演に移りたいと思います。まず、最初にお話しくださいますのは、「糖尿病からの透析を遅らせる方法」、糖尿病、代表的な生活習慣病ですが、その生活習慣病からの透析を遅らせる方法ということで、日本医科大学腎臓内科部長の飯野靖彦先生にお話をお伺いいたします。
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| 飯野靖彦先生 |
飯野先生、簡単に御略歴を御紹介したいと思いますが、飯野先生は東京医科歯科大学を御卒業になられまして、横須賀共済病院、自治大の透析室などを経て、アメリカに行っていらっしゃいまして、ハーバード大学、それから、ピーターベント・ブリングハム・ホスピタル、こちら大変有名な、世界で最初に腎臓移植をした病院でございますが、そちらでの研修を終えられて医科歯科にお戻りになり、その後、平成元年から現在の日本医科大学の方に行っていらっしゃいます。
現在は日本医科大学の第二内科の教授でいらっしゃるとともに、腎臓内科の教授ということでございます。では、先生よろしくお願いいたします。
飯野 「糖尿病(生活習慣病)から透析を遅らせる方法」ということでお話したいと思いますが、糖尿病イコール生活習慣病ではないわけですね。生活習慣病というのは、前は成人病と言われていたんですが、今は厚生労働省ですけれども、これは厚生省がつくった言葉なんです。つまり、日本人の病気が生活のいろいろな食事とか、そういうことから病気が起こってくるのを減らそうということで、よりよく働いていただくと、よりよい人生を送っていただくというために厚生省がつくった言葉なんです。
最近は、成人病というよりは生活習慣が重要ではないかということが言われてきて、それで生活習慣というものに変わってきている。私も、成人病学会という学会があるんですが、そこの評議員もやっているんですけれども、そこの学会も今度、生活習慣病という括弧をつけて、そういう学会に変えました。
その中でも一番重要なのが、糖尿病ですね。ですから、糖尿病について、これから少しお話したいと思います。それで、あと重要な食事については佐中先生がお話しなさいます。食事というのは非常に重要です。ですから、そこがポイントですので、その前の前段階として私が大体のことをお話したいと思います。
まず、慢性腎不全の患者さんの数ですが、どんどんふえてきています。普通腎臓病というのは血清のクレアチニンという値で機能を診ております。それがだんだん上昇してくると、腎臓が悪くなって、機能が低下するわけです。
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| 図1 |
保存期の慢性腎不全、つまり保存期というのは何かというと、透析に入る前の状態で、蛋白尿が出ているとか、少し貧血が出てきた、そういう患者さを、保存期の慢性腎不全というんですけれども、その方が大体20万〜25万人いらっしゃいます。
徐々に進行して、やがて末期慢性腎不全、つまり透析が必要になったり、あるいは、急に悪くなって透析になります。
透析患者さんは大体年間3万人ずつふえているんです。血清クレアチニンだけで見るわけではないのですが、血清のクレアチニンが7〜10、ほかの臨床症状とかいろいろな条件で透析に入るかどうか決定するわけです。
透析患者さんの数というのは、23万人いらっしゃいます。大体日本の人口、600人に1人が透析患者さんなんです。ですから満員電車に乗っていると1人ぐらいいらっしゃいます。私は30年ぐらい前ですか、透析を大学入局して中川先生とか越川先生とかに教わりながら透析を始めたころはそんなに患者さんは多くはなかったのです。
その頃の導入は大変で、透析をやった後はすぐには動けないとか、そういう方が多かったんですけれど今はほとんどの透析患者さんは普通に働けます。QOL、ADLとも言いますけれども生活の質は非常によくなってます。
ですから透析に入るからといってそんなに心配することはないです。ただし、なるべく入らない方がいいんですから、週3回4時間から5時間透析をしなければなりませんので、なるべくそういうふうにならないようにすることが重要です。
毎年3万人が導入されるわけですけれど、そのうちの約2万人、3分の2の方が亡くなっていくわけです。導入された方が亡くなるわけではないんですけれども、慢性にやっているとだれでも年をとってくれば寿命というのはありますから亡くなっていくわけです。ですから年間1万人ずつ透析患者さんは増加しているわけです(図1)。
透析の原因疾患
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| 図2 |
透析になる原因の病気なんですが何があるかと言いますと、全体を100%としますと透析導入患者さんは3万人いらっしゃいます。そのうちの透析導入患者さんの39%大体40%の方、10人に4人の方が糖尿病からくる腎不全なんです。
糖尿病というのは血糖が高くなって血管が傷んでくるんです。腎臓というのは細かい血管でできているんです。血管というのは血液を通す管ですが、そこが硬くなって傷んでくる、それが糖尿病の1番の問題なわけです。そういう患者さんの腎臓の血管が悪くなって、それで糖尿病性腎症ということになって、腎臓の機能が落ちてくるわけです。
その次に多いのが慢性糸球体腎炎でこれが32%です。これは生活習慣病とは直接は関係ないですけれども、やはり生活習慣が悪いと悪化速度は速くなります。ですから糖尿病にしろ慢性糸球体腎炎にしろ生活習慣をキチッとするということが非常に重要なわけです。
3番目の病気は、これは腎硬化症、つまり腎臓が硬くなり、これは高血圧が原因でなる病気なんです。ですからここにありますように糖尿病、高血圧というのは生活習慣病の中でも非常に重要な病気になってくるわけです(図2)。
生活習慣の破綻と言いますか、キチッと節制をしていないと起こる病気の中に何があるかといいますと、1番問題なのは糖尿病、次に高血圧です。皆さんなじみの病気なんですけれども、こういう病気にはなるべくかからないようにする。どうしてもかかってしまう人もいるんですけれども食事とか生活習慣とか運動で、防げる可能性があるんです。キチッとした生活態度をとっていればこういうものは抑えられるんです。
高脂血症、これはコレステロールとか中性脂肪がふえてくる病気です。これも食べ物によってある程度コントロールできます。運動によってもコントロールできます。それから脳卒中です。高血圧とか糖尿病の患者さんは脳卒中が多いのです。
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| 図3 |
うちの内科も腎臓の他に神経内科というのがありまして、脳卒中の方がたくさん入ってきます。我々の年代の50代とか、40代の方も脳卒中があります。
脳梗塞とか手がしびれて動かなくなってきたとか、急にそういうことが起こってきます。そういう方は大体において糖尿病とか高血圧を持っている方です。ですからそういうものにかからないようにするにはやはり日常生活が重要であるということが言えるわけです。
それから腎臓病。これは糸球体腎炎にしろ、やはり生活習慣に関係している。つまり塩分の摂取量が多いとか蛋白質の摂取量が多いとか、そういうことによって悪くなってくる可能性があるわけです。
それから肝臓の病気です。これは生活習慣とどうして関係あるかと言われるとなかなか難しいですけれど、アルコールが1つあります。アルコールをとり過ぎていると肝臓の病気になります。肥満の方は脂肪肝といって肝臓に脂肪がたまってしまうんです。
ですから肥満にならないようにする。アルコールは適量とする。アルコールは絶対に悪いというものではないのです。少し飲めば動脈硬化が防げるという話もあります。それから赤ワインのポリフェノールがいいとか、そういう話もあります。ですから少量ならいいんですけれども、あまり飲み過ぎてはよくないのです。
がんも生活習慣と関係があります。食事の影響があるんです。塩分をたくさんとり過ぎると胃の粘膜に影響してがんの発生率が高まるとか、そういうことも、言われています。あるいは肉食をし過ぎると大腸がんになりやすいと。
それからたばこです。たばこを吸うと肺がんになりやすい。肺がんだけではなくてほかの臓器のがんもたばこを吸っているとなりやすいということが言われています。ですからそういうことに気をつけていかなければいけないわけです(図3)。
今言いましたように医食同源。食事というのは非常に重要であるということなんです。食事と栄養。食べた物を人間の体の細胞で使ってまた出していくわけですから、食べていく物が異常だと、あるいは節制していないと人間の体というのは悪くなるということが言えるわけです。
ここに「過ぎたるは及ばざるが如し」という言葉がありますように、蛋白が過剰だと腎臓病が悪くなる。カロリーの過剰摂取だと糖尿病とか脂肪肝とか、そういうものが起こる。それから食塩が過剰ならば高血圧が起こってくるというような病気が生活習慣病なわけなんです。
糖尿病に注意する
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| 図4 |
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| 図5 |
糖尿病に話を戻していきます。糖尿病の患者さんはどんどんふえているんです。
これは1960年から1998年。25年前と比べているわけですけれども、日本では1960年のときは25万人しか糖尿病の患者さんはいらっしゃらなかったのが、今では700万人以上いらっしゃいます。これは1998年で690万人。今、720万とか患者さんがいらっしゃるわけでどんどんふえているわけです。
この40年の間に25倍にふえて。何でこんなに日本の糖尿病患者さんがふえてしまったのか。これはやはり食事の影響があると思うんです。それから歩かなくなったとか運動しなくなったとか、生活のパターンです。そういうことによって糖尿病がふえてきたということが言えるわけです(図4)。
ここに氷山の絵が書いてあります。 氷山というのは皆さん御存じのように海から出ている部分というのは7分の1なんです。このように下の方にたくさん隠れている患者さんがいるんです。
隠れているということがどういうことかです。これは糖尿病が強く疑われるヘモグロビンA1cというのがあります。これは糖尿病のコントロールがどのくらいかというのを調べる指標です(図5)。
血糖とかヘモグロビンA1cというので調べるわけです。これが6・1以上の方を調べますと日本で1997年690万人、今は740万人です。予備軍といって正常が5・6以下なんですけれども、5・6から6・1、糖尿病になるまでの方はどんどんふえて880万人。
ですから予備軍を合わせると糖尿病、こちらの氷山の上の部分と下の部分つまり海の中に隠れている部分とたしますと1620万人いる。これは日本人の成人の6人に1人が糖尿病なんです。
ここにいらっしゃる中にも糖尿病の方は必ずいらっしゃるわけですね。でもこれはちゃんと生活習慣をきちっとすればある程度防げるんです。防げない方も中にはいますけれども、ほとんどの方は防げることができるわけです。
食事がどう変わったかというのは1つ問題になるわけです。糖尿病ではカロリー制限というのがあります。
カロリーを少なくして運動をするとか、薬を飲む治療法があります。カロリーはどうか、どういうふうに変化したかと言いますと、1975年ではやはり2,226キロカロリー、1995年の段階2,042キロカロリーとあんまり変わっていないんですね。
食べるものは、我々少し、みんな太ってきましたので、食べる量増えているのかもしれませんけれど、統計的に見るとこれは国民栄養調査というのでとっていますけれどもほとんど変わっていない。
そうすると何が変わったかと言うと脂質の摂取量です。脂っこいものを食べるようになったというのが1つ。それから動かなくなったことです。昔はよく歩きました。今は電車がありますし、地下鉄もありますし、都会の人は何でも乗れますね。また地方へ行っても地方の方も歩いているかというと歩いていないです。
よく日本中に講演なんか行きますけれども、地方の方はほとんどの方は車で来るんですね。車で往復しますからほとんど歩かない。だから運動量が少なくなった。それから脂質の摂取量が増加している。この2つです。脂肪というのはカロリー数が多いんです。それだから糖尿病の原因にもなるわけです。この2つが非常に問題になっているということです。
そこで糖尿病と高血圧、この2つが生活習慣病の大きな原因になっているわけですけれども、その2つと腎臓病というのは深い関係があるんですね。先ほどの腎臓の病気の原因を見ましたけれども、そこでもわかりますように糖尿病による腎不全というのが多いのです。
それから高血圧による腎不全というのもどんどんふえてきています。ですからこういう糖尿病、高血圧によって腎臓の血管が痛んできて、それで腎不全になっていく。つまり腎臓の機能が低下するということが起こってくるわけです。
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| 図6 |
これは腎臓です。腎臓というのはそら豆と同じような形をしたのが背中の両側に2つあるわけです。握りこぶしぐらいなんですが、その1つの腎臓にこういう小さい玉みたいなのがあるんです。
これは糸球体というんですけれども、糸を巻いた球みたいなのが大体100万個あるんです。100万個あって、それがつぶれちゃうとこれは元へ戻らないんです。再生しないんです。
ですから1度腎臓の糸球体がつぶれちゃうと再生してこないですから、徐々に悪くなってしまう。それでつぶれたところはもう再生しないですから、生きているところも、そこのつぶれたところの代わりをしようと思って、代償作用といいますけれども、そういうためにオーバーワークになるわけです。
皆さん御存じのようにオーバーワークすると疲れますよね。それでネフロンもオーバーワークしているところは段々に疲れてつぶれてくるということが起こってきます。
それを防ぐにはどうしたらいいかと言うと、そこにオーバーワークをかけない。オーバーワークというのは何かと言うと、蛋白の代謝産物を排泄です。
ですから皆さん保存期の腎不全の患者さんでは蛋白質の制限というようなことをやります。これはそういう意味があるんですね。残っているところのこのネフロン糸球体へのオーバーワークを防ごうということで、蛋白制限の食事療法というのは重要になってくるわけです(図6)。
それではどうしたら糖尿病から腎不全にならないようにすると、防げるかということなんですけれども、これは答えは簡単なんですね。「言うは易く行うは難し」と言いますけれども、言うのは簡単なんですけれども実際やるのは難しい。
特に糖尿病の患者さんは我々よく糖尿病の患者さん診ていますけれども、大体全般的に腎炎の患者さんと糖尿病の患者さん比べると、糖尿病の患者さんというのはこれは一般的に皆さんがそうじゃないんですけれども、大体自己愛の強い人が多いんですね。
糖尿病の患者さんというのは太っていて、それで太るのをやめましょう、食事制限しましょうと言っても「おいしいもの食べるんだ」と言って食べる方多いんですね。ですから、割にそういう方は全員が全員そうじゃないんですけども治療がなかなかうまくいかないのです。
それで糖尿病の治療はどうしたらいいか。糖尿病から腎臓が悪くならないようにするにはどうしたらいいかと言うと、糖尿病の治療なんです。これを厳格にやれば腎臓は悪くならないです。
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| 図7 |
イギリスのUKPDSといって大きな研究があるんですけれども、そこでも出ているんですけれども、先ほど言いましたヘモグロビンA1cという血糖がどのぐらいかという指標になりますが、それが6・5未満の方は腎臓が悪くならないというデータがあるんです。
ですから糖のコントロールをきちんとしていれば腎臓は悪くならないのです。
糖尿病の合併症というのは目と腎臓とそれから神経です。3つの場所が主にやられます。それからあと大血管といって脳つまり脳卒中、それから心臓もやられます。ですからそういうところをやられないようにするには血糖のコントロールをきちんとするということが重要なわけです。
それにはどうしたらいいかと言うと治療、糖尿病の治療です。食事です。それから運動です。走っていますね、この写真は私でして。何とかはやく走ると言いますけれど先週も走って来て「谷川真理ハーフマラソン」というのがあって1番後ろの方でしたけれども走っています。
それから食事の制限ですね、カロリー制限。それから必要ならばインスリンとか、経口糖尿病薬とか、お薬を飲むと。この3つが治療法として必要なわけです。今言いましたように血糖のコントロールをきちっとして、ヘモグロビンA1cというの、これは覚えておいた方がいいですね。糖尿病の方はきちっと覚える。血糖のほかにヘモグロビンA1cという値をきちっとコントロールする、正常は6・0未満ですけれども、できれば6・0未満にした方がいいんですけれども、6・5未満にコントロールする(図7)。
蛋白尿と血圧を抑える
その他に皆さんの腎臓が少し悪くなってきた。糖尿病で少し悪くなってきた方の治療法には次のようなものがあるんです。これは糖尿病が原因で腎臓が悪くなってきた患者さん以外でも、ほかの病気で例えば高血圧による腎障害、あるいは慢性糸球体腎炎による腎臓の病気、そういう場合でも共通する因子なんです。
それは何かというと、蛋白尿の程度を少なくする。つまり尿に出てくる蛋白の量が多いと腎臓がどんどん悪くなってくる。あるいは、ほかの血管が悪くなってくるということは言われているんです。
ですから、尿に出る蛋白の量を少なくする治療法を目指すというのが1つ、それから血圧です。血圧は高血圧が原因の腎不全だけではなくて、糖尿病でも慢性糸球体腎炎でも、そういう患者さんでも血圧を低くしておいた方が腎臓は悪くならないです。それから長生きもできます。ですから血圧はなるべく低くするということが重要です。
それから食事をきちっとする。医食同源と言いましたけれども、食事というのは非常に重要です。人間の体の病気と、それから密接に関係しているのが食事なんです。ですから食事に気をつけなければいけないというようなことが言えるわけです。
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| 図8 | 図9 |
蛋白尿が出ている患者さんというのは、これは腎炎の患者さんですけれども、やはり悪くなる、透析になる方が大体20年後、これ腎生検というのやりまして、腎炎IgA腎症なんですけれども、腎炎になってから20年後に透析になる確率は、40%の人が透析ですね。60%の人が大丈夫なんですけれども40%、10人に4人は透析になってしまうというデータがあります。
それで蛋白尿が出ている人と出ていない人で高血圧の人を見ますと、やはりこれは微量アルブミンです。普通のテープではプラスにならないようなちょっとした蛋白が出ている人でも心筋梗塞とか他の臓器障害起こす確率が高くなるということが言われているわけです。
ですから尿蛋白が出ている人、これは尿蛋白が出ていること事態が悪いわけじゃなくて、それと並行していろいろな血管が悪くなっているということなんです。ですから、そういう血管障害を防ぐための1つの指標として、このアルブミン尿とか、尿蛋白というのが重要になってくるわけです。だから蛋白がたくさん出ている特にネフローゼ症候群の方は早く治した方がいいわけですね。蛋白尿が多い方は早めに透析になってしまいます(図8)。
蛋白尿が多い方、これは赤印で1番下にあるのが蛋白が1プラスから4プラス。4つプラスの人とそれから蛋白尿が+−の人と。これはフラミンガムスタデイといってボストンの北にあるいい町なんですけれども、僕もボストンにいたものですからフラミンガム行ったことありますけどいいところです。
そこの住民の方を長年調査しているんですね。もう50年以上調査していますけども、ここの方は亡くなるとほとんどの方が解剖するんです。剖検と言ってそういうこと皆さん協力してくれる町なんですね。
その方たちのそういう蛋白尿が出ている人は早く悪くなります。生存期間を見ています。ですから長生きするには蛋白尿が少ない人の方がいいということが言われているわけです(図9)。
ACE阻害薬とARB
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| 図10 | 図11 |
これはHOPE試験というある試験があるんですけれども、蛋白が出ている人と出ていない人では、このMAというのは微量アルブミン量なんですけれども、そういう方はやはり心筋梗塞とか、脳卒中、心血管系の死亡率というのは高くなってくるわけです。
総死亡率も高くなってくる。ACE阻害薬といいますけれども、こういうもの使うとある程度抑えられるということが言われます。
このACE阻害薬とか、あるいはARBといってアンジオテンシン受容体拮抗薬という薬が最近できております。そういうものを我々もほとんど使っていますけれども、保存期の腎不全の方に使って、その腎不全が進行するのを抑えるようにしております(図10)。
これはその1つのARBの中のニューロタンですけれども、そういう方にこのロサルタンを使うと尿蛋白が減るということが言われているわけです。
ですからこういう患者さんは心筋梗塞とか、あるいは腎不全になるスピードが遅くなるわけです
(図11)。
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| 図12 |
それから腎炎なんかだと、ペルサンチンなどの抗血小板薬、これは血小板から増殖因子というのが出てきますので、そういうものを使います。それから特殊な場合には免疫抑制薬、急速に腎炎が発症するとか、そういう場合には免疫抑制薬を使います。それから食事療法ですね。それからクレメジンとかそういうものを使っていくということです(図12)。
それで血圧がやはり高いと腎不全なりやすいというのも、こういうデータがあるんですけど、こちらは血圧高い人はどんどん腎不全になってしまう。末期腎不全、透析になりやすい。ですから血圧は低めにしておいた方がいいわけです。
どのくらいにしたらいいかというのは、このアメリカの合同委員会で最近発表されていますけれども、糖尿病を合併する人は130の80未満です。腎臓で蛋白が1グラム以上出ている人は125の75で非常に厳しいんですけど、ここまでやるのなかなか大変ですけども、このくらいに血圧をコントロールすることが重要です(図13・14)。
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| 図13 | 図14 |
カルペディエム
腎臓学会で検尿の勧め委員会というのをつくっていて僕が委員長なんですけど、なるべく腎臓を悪くしないようにするというので全国キャンペーンをやっているんです。
やはり検尿をきちっと受けて、蛋白が出ている場合には早めに治療をする。今は昔と違ってある程度抑制することができます。腎不全、昔は治療法がないと言われていましたけど、ある程度遅らせることができます。それから軽いものは蛋白尿を消すこともできます。(図15)。
それで僕も以前こちらで講演させていただいたんですけども、そのときにも出しましたけれども、カルペディエム(calpediem)という言葉「今を生きる」1日1日を皆さん病気になってやはり非常につらいと思うんですね。つらいけれどもみんなつらいことはあるんですね。ただ自分のつらさの方が1番大きいんだと皆さん自分で思います。
でもそのほかにやはり生きていくには楽しいこともなければいけないわけですから、そういう楽しいことを見つけていく。
ですから、一瞬一瞬を、あした我々僕もその辺を歩いていて自動車にぶつかって死ぬかもしれないし、皆さんの方が長生きできる可能性も多いのです。その一瞬一瞬を大切に生きていくことが重要である。
そうすると何というか世の中明るくなりますし、一日一日が楽しくなります。
最近禅宗の言葉で「日々是好日」というのがあります。日々是好日(ヒビコレコウジツ)ということも言いますけれども、禅宗ではニチニチと言うそうですけれども「日々是好日」(ニチニチコレコウニチ)という。
これは何か深い意味があるそうですけれども、悟りの境地らしいです。それでこのカルペディエム(calpediem)と同じようなことで一日を、日々、毎日毎日すべてを受け入れる。悪いこともいいことも全部受け入れて、それが自分の人生だと。
ただその中でいいことはどんどん伸ばしていくということです。悪いことは改善させていくというような、そういう言葉が「日々是好日」と言うそうです。それを僕も好きなんで、禅宗の言葉ですけれども大切にしてます(図16)。
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| 図15 |
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| 図16 |
それからもう1つ最近日野原先生が、聖路加の先生ですね、90何歳のえらい方なんですね。
その先生が言っているのはプラトンの社会の中でどういうことが重要かなのですが、それは元徳と言うんですね。徳の1番元々になるもの。それは4つあると言われているんですね。
1つは何かと言うと、正義。これは病気と関係すると思うんですね。正しいことをしていかなきゃいけない。社会に生きるためにはどういうことをして、そして正義が必要であると言うんですね。それから節制、節制をする。つまり糖尿病にも関係しますが、節制が重要である。
それから知恵ですね。知識がなきゃいけない。ですから知恵と正義と節制。それから最後に勇気がなきゃいけない。その4つが社会の中で生きていく。つまり病気に対してもそうだと思うんですね。皆さん1日1日を大切にするときには、こういう言葉で生きていくのが重要ではないかなという気がしております。
どうも御静聴ありがとうございました。(拍手)
松村 飯野先生ありがとうございました。今、日野原先生のお話が出ましたが、日野原重明先生はほんとによく節制していらっしゃいますね。
今確か92歳でいらっしゃると思いますが、現役のドクターで、今でも頑張っていらっしゃいますし、もうあの記憶力はすごいなあと思って、先生にこの間もお話をお伺いしましたら「僕はきちんと自分の食事でも何でも守るんだよ。
でもパーティなんか行ったら皆さんと一緒においしくいろんな物たくさんいただくよ。だけどそこでたくさん過食をしてしまったら次の日はうんと減らして1週間ぐらいで帳じりを合わせるように常にしているから、だからこんなにスリムなんだよ」って先生おっしゃっていました。 やっぱりそういう節制というのがすごく大切だなという気がしますね。
皆さんもぜひ今の飯野先生のお話をこれからの生活に役立てていただきたいと思います。
東腎協 号外 2004年11月15日
Index
最終更新日:2005年1月27日
作成:K.Atari