東腎協第31回総会記念講演
4時間では透析不足?!
―いま、長時間透析が求められるわけ―
講師:医療法人かもめクリニック理事長 金田浩先生

 きょうの演題は「4時間では透析不足?!」―いま、長時間透析が求められるわけ―
ということで話させていただきます。私は4時間では透析不足であると思います。

長時間透析の利点

 4時間では透析不足であるとする理由でございますが、第1番目は日本の4時間を中心とした10年生存率が41〜42%では低すぎることです。フランスのシャラ先生が行なっておられます8時間透析では、10年生存率が85%です。透析時間が長くなりますと、10年生存率が40%から80%に、透析時間にほぼ、比例して伸びてくるということでございます。

 それから第2は平均余命が健常者の2分の1と低い。第3番目は年間死亡率が9.4%と約10人に1人の方がお亡くなりになること。 

図1

 それから第4番目は、降圧剤の服用率が4時間透析の患者さんでは60.9%と高い。我々の成績は6時間では22.8%。約8割の患者さんは降圧剤を飲まないで透析だけで血圧を正常化させています。 ところが8時間透析、フランスのシャラ博士のなさっていらっしゃる治療では、実に2%の人しか飲んでいない。私はこのシャラ博士の降圧剤を服用しないで、透析だけで血圧を下げるという方法を高く評価しております。なぜならば降圧剤を飲むと血圧が下がり降圧剤の効果がきれると血圧が上がるというこの変動幅が大きいほど動脈硬化を促進すると言われておりますので、降圧剤を飲まないで正常血圧になることが一番よろしいわけです。

 それから第5番目が体重減少。要するに、体重が減るということは栄養状態が悪いということでございますが、大体4時間透析では健康時より、5キロから10キロ減っている人がいらっしゃる。一方6時間透析ではほぼ健常時の体重に近いところまできます。

 それから第6番目は4時間透析では、6時間透析と比較してアミロイドーシスの発現頻度が高いようです。

 こういう理由から私は4時間では透析不足であると考えております。(図1)

逆転の発想

 さて今の4時間では透析不足であるとするならば、もっと新しい方法を考えなくてはいけません。私が平成10年、今から約5年ぐらい前に考えたことでございます。長年4〜5時間透析をやっていても、なかなかいい成績をあげられない。生存率を向上していくことができず、行き詰まっておりました。
そんな折、フランスのシャラ博士の論文に出会いまして、そこで私なりの新しい方法を考えたわけでございます。

図2

 第1番目、従来の治療法と全く反対の、即ち、発想を逆転させて、透析時間を思い切って延ばす。長時間になります。そして、透析回数も週3回にこだわらないで、必要に応じて、4回、5回、6回やってみたらどうか。それから、透析時間が短いために患者さん達は厳しい食事制限を強いられてきたのではないか、食事制限をもっと緩やかにしたらどうだろう、ということでございます。

 第2番目、毎年透析学会では死亡原因と死亡率が発表されておりますが、過去10年間不動の三大死因が心不全、感染症、脳血管障害でございます。この三大死因が実に死亡患者さんの過半数を占めております。この過半数を占めている死亡原因を可能な限りゼロにしていけば成績がよくなるはずであります。突き詰めて考えると十分な透析を行い、高血圧をなくして、栄養状態をよくすればよいということです。

 さてシャラ博士の論文、それから先ほどの逆転の発想とか、それから死因の分析を行ないまして、私はどうも今のままの治療ではだめだと、もっといい治療を、もっと新しい方法をということで考えたわけでございます。ただ長生きするだけじゃなくて、元気でなくちゃだめだと、元気で長生きするという治療をしたいと。その方法として、長時間透析と限定自由食を考えたわけであります。(図2)

限定自由食の考え方

 さて限定自由食と言いましたけれども、この考え方の根拠についてお話いたします。食塩は便と汗からほとんど出ません。出るのは透析される量だけです。そうしますと短時間透析ではあまりとれません。透析で除かれた分だけ口からとることができる、従って食塩量は一日量として3ないし5グラムが普通です。

 ところが長時間透析は短時間よりも食塩量をより多く体外に除去出来ます。多く取り出す分だけたくさんの食塩を食べられることになります。

 もう1つ考えなくてはいけないのは蛋白とカロリーの問題であります。1回の透析でアミノ酸の6ないし8グラム、蛋白にして40グラムが失われる、カロリーにして200キロカロリー失われる。蛋白の40グラムというのは大体、卵10個に相当すると思われますから、相当の量が1回の透析で失われていくわけです。透析を3回やるとすると実に蛋白は120グラム、カロリーは600キロカロリー失われていくわけです。透析治療そのものがエネルギーを失う治療ということです。ですから透析で、出た分だけ食べるのでは追いつかない。さらに失われたものを補充しないとバランスがとれないということです。血液透析の患者さんの内約40%、4割の方が栄養失調。これはカグラーさんが言った言葉です。昨年の「キドニーインターナショナル」という医学論文誌に出ておりました。そういうことまで考えると、制限食を行なって透析を受けることは非常にエネルギーを失って栄養失調をどんどん増加させていく可能性があることになります。短い透析時間で、塩を出せる量が決まると、必然的に入る量が決まってくる。さらに蛋白、カロリー、エネルギーを失っていく。こうしますと栄養失調がますます増強していくということになるわけですね。

塩分は除水量に比例して透析により除去される

 食塩に関して透析で1リッターを除水しますと食塩は8.1グラム出ます。2リッター除水しますとその倍です。16.2グラム。これは透析時間に関係なく、ほぼ同じ割合で出てまいります。3リッターで24.3グラム、4リッターで32.4グラム。要するに、たくさんの食塩を透析で取ろうと思ったら、たくさんの水を、体重を、しっかりふやして除水した方がいい。除水量1リッターとしましょう。そうすると食塩は8.1グラム。これを週3回しますと、3×8=24グラム。これを週7日で割りますと、だいたい3.5グラムに相当します。一日の食塩除去量は食べていい量に相当します。このように出た量から食べていい量を換算しますと、1リッターの除水の人は1日3.5グラムの食塩を食べないとバランスがとれないのです。2リッターの除水をした患者さんは約7グラムの食塩をとらないといけない。とらないとバランスがとれないということですね。これは1回の透析で失われるエネルギーなんかは入っておりません。3リッターで10.4グラム、4リッターで13.9グラム。我々の施設では、大体1回の除水の平均が3.3リッターです。そうすると大体11.5グラム食塩をとっている。これはちょうどバランスがとれているということです。(図3)

 限定自由食は、カリウムとか塩分、水分がやや控えめ、ということですが、皆さん、結構食べていらっしゃる。限定自由食の1番の目的は良質な蛋白を十分とるということでございます。要するに栄養失調を改善するには蛋白をしっかりとることである。蛋白をしっかりとって患者さんの栄養状態をよくしないと長生きできないということでございます。

 それから透析方法は、血液透析と血液透析濾過。我々の方で約46%は血液透析濾過をやっております。

 透析膜でございますが、PS膜とかCTA膜を中心としたハイパフォーマンスのメンブランを使って平均1.3uの小さい膜を使っております。

 次に血液流量でございますが、これは1999年の日本透析学会統計の資料で、大体、体重1kgあたり1分間に2.5〜3ccが一年生存率にいいというデータが出まして、すなわち体重50キロの人では、一分間に150cc以上とると生存率に対する危険度があがるというわけです。また、2.5cc以下、即ち、1分間125cc以下でも危険度が上がります。そういう統計のデータが出てるわけですね。したがってこれに準じ、平均1分間150ccとなっております。

 さて、1回の透析時間についてですが、今年の3月31日現在でかもめクリニックの総透析患者数は269名で、1番多いのは5時間透析で159名60%。6時間が57名22%、4時間が9名23%。5時間以上は実に88%。約9割の患者さんは5時間以上の透析を受けておられます。

 保険の点数が変わりまして、以前より6時間透析は減少しましたが、5時間透析を中心にして今週は3回、来週は4回とか、そういうふうして透析時間を月間70時間にする、というふうな方法にシフトしており、月間70時間以上を長時間透析と定義しております。(図4)

図3 図4

長時間透析で降圧剤は減少できる

「平均血圧計算例
平均血圧=
 最低血圧+(最高血圧−最低血圧)÷3
140−80の人の場合
 80+(140−80)÷3=100

 透析で1番問題になりますのは、血圧のコントロールということでございます。なぜ長時間透析をやるかというと、血圧を十分にコントロールしたいから長時間やると言っても過言ではありません。私はそういうきっかけで長時間を始めたわけでございます。

 一例をお見せします。(図5)平均血圧は、拡張期血圧、いわゆる最低血圧プラス脈圧の3分の1を足したものです(右表参照)。透析患者さんの平均血圧は100から120が正常とされています。糖尿病の方の高血圧が、なかなか下げにくいということです。この方は37歳の女性で透析13年に入っておりますが、まず一番上の平均血圧でございますが、120以上をずっと保っておりました。まず5時間週3回から始めたわけです。ところが一向に血圧が下がらない。そこで6時間週3回にしました。しかし、まだ血圧がなかなか下がらない。しょうがないなということで、1回6.5時間週3回ということにしまして、約5ヵ月ごろからやっと100を割ってきております。血圧の薬でございますが、このように大量の薬を使っておったのですが(図5下段)、だんだん減らしてきておりまして、最終的にはゼロになりました。血圧を正常化する透析時間は、患者さん一人一人違いますね。ある人は5時間でもいいし、ある人は6時間でもいいし、で、ある人は6時間じゃ足りなくて、6.5時間やらなくちゃいけないということです。このように患者さん一人一人に透析時間が変わってきます。そういうことを我々は適合透析と考えています。

 さて、血圧の話をいたしましたが、そのほかの成績はどうかということですが、透析後の体重でございますが、全国平均が52キロ。6時間透析で約58キロ、6キログラム体重が増えていく。それから標準化透析量Kt/vでございますが、全国平均が1.33、これが1.68、十分良好な成績を得ております。アルブミンがわずかですが高いです。PCR(蛋白異化率)が高い。それから、食塩の摂取量ですが、11.6グラムとなる。ちょうど普通の施設の透析患者さんの倍ぐらい食べていらっしゃる。平均血圧でございますが、全国平均が105でございます。ところが、かもめクリニックの患者さんは101であります。平均血圧からみると余り違わないのではないか、このデータからは差がないようにみえますが、全国統計の降圧剤の服用率は、約61%であり、我々の施設では降圧剤の服用率は2割ちょっとです。このように11.6グラムの大量の食塩を取ってかつ降圧剤をあまり飲まないで、約8割近い人が降圧剤を飲まないで血圧が低め安定に保たれるということがわかります。(図6)

図5 図6

長時間透析で心臓機能も改善

 さて、心臓の働きについて、お話しいたします。少し体重がふえただけで息切れがする、すぐ心不全を起こすという患者さんには長時間透析は、非常に効果を発揮いたします。この患者さんは、私達の施設に来られる前は心機能が非常に悪かった方です。左室のポンプの機能は大体55%以上が正常だといわれていますが、この方は来院時、30%ぐらいで、非常に心機能が低下した状態でした。当院に来られまして、すぐ6時間透析をやりまして、それから、6時間を3回と4回隔週でやりますと、月間実に100時間を越える透析時間となります。これは週3回8時間に相当いたします。それからさらにもう一つ大事なことは血液流量を200cc/分とっていたものを、150cc/分に落としました。心機能の落ちた人に血液流量をがんがんとって、短時間でやるとよくならないのです。私の経験では、血液流量をゆっくり取って、また透析膜もあまり大きくないものを使って、ゆっくり時間をかけてやると、左心室機能は、相当の頻度でよくなってきます。そういうことで、糖尿病で心機能の落ちた患者さんは6時間、週4回、血液流量は1分間120ccぐらい、ゆっくり流すと、約半年ぐらいたちますと、相当心機能がよくなってまいります。心機能の低下していた人には絶対的な適応であろうと考えております。長時間やるようになってから心機能がよくなってくる患者さんがどんどん増えてきました。私はこういう経験をしたときに初めて長時間透析に出会えてよかったなと心から思っているわけでございます。

図7

BMI(肥満係数)は上昇

 次に栄養状態について、お見せしたいと思います。まず26例の患者さんで、長時間透析を始める前と、初めてから1年間、2年間、3年間まで追っております。(図7)

まず、一番上には平均血圧をお示ししました。長時間透析開始前は110前後であったのが、徐々に下がっております。

下の方に栄養状態として、基礎体重(●表示)それからこのBMI(▲表示)というのは、体重を身長の2乗で割った値(体重÷身長÷身長)で大体27以上が肥満だとか、透析患者さんは20.6ぐらいが普通であるといわれています。

26名の患者さんの長時間透析開始前のBMIは大体22ぐらいで、それが徐々に基礎体重と一致して、時間とともに上昇しております。明らかに栄養状態は改善しておりますが、それにもかかわらず血圧は低め安定ということが、これでご理解いただけると思います。

3大死亡原因を減らす

図8

 本日の一番重要な成績をお話します。私は先ほど申しましたように、何のために、こういう治療を始めたかというと、高血圧関連の病気、例えば心不全、脳血管障害、心筋梗塞をできるだけ少なくしたい。それから、さらに栄養状態をよくして感染症で亡くなる患者さんも少なくしたいと。そういうふうなことの総括がこの表に示されておるわけでございます(図8)

 左側に全国統計を示しております。死亡原因と、それから死亡率を示しております。
かもめクリニックでは、269名中、4年間にお亡くなりになった方が16名でございまして、平均しますと4.5%の死亡率ということになります。全国平均の約半分です。
死亡原因で一番多いのは実はがんなのです。がんを除いてみますと、全国平均では、8.7%になります。かもめクリニックでは、がんを除きますと平成11年度は死亡率がゼロということになります。平成12年度が2.6%、平成13年度は4.4%、平成14年度が1.9%、平均しますと2.2%となります。がんを除きますと全国平均の約4分の1に死亡率を落とすことができました。
このように長時間透析は、結果的に我々が目指す死亡率を相当少なくすることができることが証明されました。

難治性の高血圧が第1適応

 そこで長時間透析の適応について、私の考えを示しますと、治療がなかなか困難な高血圧が、まず第1適応。第1適応というのは、長時間透析以外の治療法がないという意味での適応でございます。あと、心機能の低下した人は、長時間透析をやらないと、絶対よくならないのだろうと思います。そういう意味では、難治性高血圧と心機能の低下を伴う頻度が非常に高い糖尿病の患者さんは、私は長時間透析の第1適応ではないかと考えております。それから体の大きい人、特に60キログラム以上の体の大きい人は、統計的にも早く亡くなるということがよく言われております。ただ、体が大きいから早く死ななくてはいけないという理由は全然ないわけで、ぜひ長生きしてほしいと。そういう意味では私は第1適応に入るのではないかと。例えば、40キロぐらいの人と120キロぐらいの人が同じ4時間透析やっていいはずがないわけで、我々も130キロぐらいの人は7時間透析をやっております。

図9

 それから第2適応としましては、長時間やった方がいいのではないかと思う患者さんで、その第一は、栄養状態が悪い人です。食事は比較的自由でございますから、アルブミンが3.5以下でしたら、この長時間透析を受けてどんどん食べて、早く元気におなりになった方がいいでしょう。それからちょっとした感染で風邪引いても肺炎になりやすいような人もお受けになった方がいいだろうと。それから色素沈着.口臭.かゆみを訴えておられる方。それからやせた方も入ると思います。それからもう一つはストレスに弱い人。要するにあれ食べてはだめだ、これは食べてはだめだと言うと、もうストレスだらけになりますね。(図9)

長時間透析で細胞内から毒素が抜けやすくなる

 それでは、なぜ長時間透析がいろんな効果を発揮するかという、基礎的な理屈を少しお話ししたいと思います。
これはアンドレ.ピアレトスという方が発表された論文でございますが、短時間で透析される毒素は大体血管の周囲に存在する毒素であると考えられております。
ところが長時間透析やりますと、細胞内はもとより、関節や骨などの全身に分布した毒素が有効に取れる。それは細胞膜にある毒素の拡散速度調節能という、いわゆる毒素を取り出す能力が非常に活発になることが証明されております。その結果細胞内の毒素がドッと出てきて、それが透析されるわけであります。

図10

 もう一つは毒素の分子量の問題でございます。かゆみとか皮膚の色素沈着、貧血とか血圧が高いとか、そういう重要な毒素はどうも中分子か大分子毒素ではないかと考えております。これに関しては多くのいろんな考えがあるわけですが、毒素の分子量と透析時間の関係をみました。毒素の除去されるスピードを示したものですが(図10)、尿素、いわゆる小分子が、比較的早い時期にスッと抜けていきます。大体3時間ぐらいから、ほぼフラットに達しています。ところが中分子から大分子毒素は時間がたてばたつほど、より多く抜けていくということがわかっています。これは血液流量に関してもそうです。血液流量をゆっくりとると、比較的中分子か大分子毒素が抜けやすい。血液流量をゆっくりとるということが、血圧を下げ、心機能をよくし、そして栄養状態をよくする理由です。

 長時間透析で大事なことは、ゆっくりと、除水して血流量もゆっくりとってダイアライザーも小さい膜を使って、長い時間かけてゆっくり透析を行うと透析中のトラブルがほとんどない。これが長時間のコツであります。

大腿静脈穿刺

 さて、長時間透析の話は一段落しまして、私が20年前から実は、シャントトラブルの患者さんに対して大腿静脈穿刺をやっております。シャントトラブルに対しては人工血管、ダブルルーメンといろいろ対策がありますが、私はCAPDも含めて、とにかくそういう人工的な操作は一切やらないで、できるだけ人間の本来持った血管を使うということを考えてきました。

図11

私のクリニックの患者さんが100人いますと15〜16人はシャントが使えなくなり、大腿静脈に穿刺しております。10年以上大腿静脈穿刺をされている方は数名いらっしゃいます。5年以上は14〜15人ぐらいいらっしゃいます。いろんなシャントに関するトラブルを起こりにくくするためには人工的な操作を加えないということが、私は一番大事なことだと思います。それから自己血管は閉塞するということはまずありません。大腿静脈に沿って針を刺すのは、少しテクニックはいりますけども静脈でございますから、ほとんど副作用となる問題はございません。(図11)

血圧のコントロール、長時間透析、 蛋白の十分な摂取が大切

 私たちが重要と考えているのは、スクリブナー博士がおっしゃっている十分な透析の3大条件であります。一つは血圧を十分コントロールする。二つ目は十分な透析量で透析を行う。三つ目は蛋白を十分にとること。この三つの条件を満たした方法が長時間透析プラス限定自由食であると思います。このような治療を行いますと患者さんが長い人生を合併症もなく、ゼロとは言わないまでも、重症な合併症に至らないような状況で限りなく健常者と同じような生活をしていただけるのではないかと、私は考えております。

東京で長時間透析は可能か

図12

 最後に、東京で長時間透析は可能かどうかということに対して、私なりの考え方を話します。私の考えている長時間透析を具体的にやるということは、一つの施設の全透析患者さんの7割から8割が長時間透析を実施するということが、本当の長時間透析施設であろうと思います。そういう長時間透析施設が東京で果たしてできるかどうか、ということを私は考えたわけございまが、極めて困難であるということになりそうです。
ただ何と言いますか、ドクターの意志と、また患者さんもそれに一致協力していただければ可能性がないわけではない。ただ我々は経営的にもほんとに英知を絞って、何とか今まで長時間透析を5年間やっておりますから。これが赤字だったらやっていけなくなりますが、工夫してやればできるということなのです。しかし、これはいわきという、東北地方の非常に土地が安いところという、いい条件があって初めてできることで、問題はやはり安い場所の確保ということになります。

 それから我々は透析専門ですけども、合併症のある患者さんの対応が重要な問題です。例えば心臓合併症、それから整形外科系の合併症、そういう患者さんを紹介できる一流の病院と連携できるかどうかということ、これが大きな条件。それからさらに最大の条件は、ある程度患者さんの人数が確保できることであります。なかなか順風にはいかないでしょう。これはもう患者さんの協力がない限りは、ただ医者の良心だけではなかなかできないだろうなあ、と私は思います。(図12)以上です。ご静聴ありがとうございました。(拍手)

 質問時間が短かったために、会場の参加者の多くが、残念がっていました。親切な回答を頂きましてありがとうございました。
 また、最後に、現在、虎の門.高津会の会員の出口章子さんが平成13年12月から去年平成14年の4月まで金田先生にお世話になり、元気になった感謝の気持ちを込めて、花束を贈呈しました。 会場一杯の拍手でした。

東腎協 2003年7月25日 No.149


最終更新日:2003年10月3日
作成:K.Atari